アブータ(ABUTA)
アブータ(ABUTA)

Family (科名) Menispermaceae
Genus(属名)  Cissampelos
Spieces(種名) pareira


使用部位

蔓、種、樹皮、葉

伝統的利用法

蔓を煎じる場合:1回0.5カップを1日2~3回経口摂取するか、患部に直接塗布する。
生理痛、生理不順には樹皮か根の粉末を1日1~2グラムか1:4アルコールチンキ
1~2mlを日数回適に分けて経口摂取する。

禁忌

アブータには血糖低下作用があることが2つの動物実験で確認されている。
低血糖症の場合や血糖値を下げる薬剤との併用には専門家による管理が必要。
アブータに含まれるテロラドリンというアルカロイドは、動物事件や臨床例から
心臓機能に関する様々な作用が報告されている。
心臓病や心臓病関連の薬剤の服用をしている場合は専門家による管理が必要。
妊娠中の場合は専門家によるコンサルティングが必要。

薬との相互作用

心臓病関連薬剤と相互作用する可能性がある。

一般名

Abuta, abutua, barbasco, chiric sanango, imchich masha, butua, false pareira, pareira, aristoloche lobee, bejuco de raton, feuille coeur, liane patte cheval, gasing-gasing

異名

Cissempelos acuminata, C. argenta, C. auriculata, C. australis, C. benthamiana, C. boivinii, C. bojeriana, C. caapeba, C. canescens, C. cocculus, C. consociata, C. convolvulacea, C. cordata, C. cordifolia, C. cumingiana, C. delicatula, C. diffusa, C. discolor, C. diversa, C. elata, C. ellenbeckii, C. ericarpa, C. glaucescens, C. gracilis, C. grallatoria, C. guayaquilensis, C. hederacea, C. hernandifolia, C. heterophylla, C. hirsuta, C. hirsutissima, C. kohautiana, C. limbata, C. littoralis, C. longipes, C. mauritiana, C. microcarpa, C. monoica, C. nephrophylla, C. obtecta, C. orbiculata, C. orbiculatum, C. orinocensis, C. pannosa, C. piolanei, C. smalzmanni, C. subpeltata, C. subreniformis, C. tamoides, C. testudinum, C. tetrandra, C. tomentocarpa, C. tomentosa, C. violaefolia, Cocculus orbiculatus, C. villosus, Dissopetalum mauritianum

アブターとは...

アブータは本木性の蔓で、長さ30cmにもなる大きな葉を持ち、暗い色のブドウ程度の大きさの実(食べられません)を付けます。 Cissampelos属には30~40種類の蔓植物があり、アブータはその一種です。アブータの蔓は黒味がかった茶色をしていてとても硬質、鉈などで切断すると、切り口がワックスをかけたように艶やかなのが特徴的です。ペルー、コロンビア、ブラジルのアマゾン熱帯雨林一帯に自生していていますが、庭園を飾る観葉植物用としても広く栽培されています。 アブータは女性特有の疾患の治療に用いられてきたことから、南米各国では『助産婦のハーブ』の俗称で広く親しまれています。アマゾン熱帯雨林一帯に住む先住民達によるアブータの利用には数千年の歴史があると考えられていて、今尚広く利用されています。ギアナのパリクル族はアブータを湿布にして局部的な鎮痛剤として、ワヤピインディアンは口腔内の鎮痛剤としてアブータの葉や幹を煎じて使用しています。エクアドルのエチュア族は、アブータの葉を煎じて結膜炎や毒蛇に噛まれた時の治療に用います。ペルーアマゾンでは種が毒蛇に噛まれた時の毒消しとして、或いは利尿剤、去痰薬、解熱剤、性病の治療などにもアブータが使用されています。アマゾンのハーブヒーラーや『クランデーロ』と呼ばれるシャーマン達は、種を煎ってお茶をたて、体内外の止血に用いてます。また、葉でたてたお茶はリューマチに、蔓や樹皮のお茶は不整脈に効果的と考えられています。LEWIS夫妻著の『MEDICAL BOTANY』には、アブータの根が流産防止や子宮からの出血防止に利用されていることが記されています。現在でも、アマゾンの助産婦達はアブータを常に持ち歩き、出産前後の痛みや子宮からの出血に用いています。今日のブラジルのハーブ医療では、アブータには利尿効果、強壮効果、解熱作用、生理痛緩和作用があると考えられています。

アブータとアルカロイド

アブータは、Menispermaceae属のその他の植物同様、様々な種類のアルカロイドを含有しています。サポニンやステロールは一般的で、トリテルペン、エッセンシャルオイル、ポリテルペン、ポリフェノールの含有もありますが、最も注目され研究の対象となってきたのはアルカロイドです。アルカロイドテトランドリンには鎮痛、抗炎症、解熱、抗腫瘍、抗白血病等の効能があり、多くの研究レポートが発表されています(1)。ベルベリンと呼ばれるアルカロイドも含まれていますが、これについては血圧降下作用、抗菌作用、抗腫瘍作用についての研究が発表されていて、心臓不整脈、癌、カンジダ症(腸炎の一種)、下痢、過敏性腸症候群の治療に利用されています(2)。シサンペリンはアブータに含まれているもう一つの重要なアルカロイドですが、エクアドルでは骨格・筋肉弛緩剤として販売されています。更に神経筋遮断作用があるとの研究結果が発表されているアルカロイドもあります(3)。より広い視点でアルカロイドを見てみると、アブータに含まれているアポルフィンアルカロイドは熱帯雨林では『クラーレス』と呼ばれる毒矢に使われていますが、これに関する研究レポートも数多く発表されています(4)-(6)。

アブータの活性成分

植物化学的に分析してみると、アブータはこれらアルカロイドの宝庫であることがわかりますが、特に1960年代以降多複数の研究の対象となり(7)-(10)、その結果テトラディンに加え、パルマティン、ハヤティニンそしてベルベリンの派生などがアブータに含まれていることがわかりました(11)。更に近年発表された研究では、アブータの構成要素の一つである、ビスベンジソキノリンアルカロイドに抗炎症作用があることが明らかにされています(12)。一方、臨床実験では、ビスベンジソキノリンアルカロイドが炎症の決定的な媒介者となる一酸化窒素の生産を抑制する働きが確認されていて、アブータの持つ抗炎症作用のメカニズムの一部が明らかになっています。更に1993年発表された2つの研究論文によると、抗白血病特性のあるアルカロイドとして知られているトロポイソキノリンとパレイルブリンAとBがアブータに含まれていることが明らかにされています(13)-(14)。

女性ホルモンのバランス

アマゾン熱帯雨林やその周辺地域においてアブータは、伝統的な使用方法が今日においても忠実に守られています。一方、北米や南米のハーブ医療では、生理に関連した症状を緩和したり、ホルモンバランスの調整の手助けや血圧を下げる効果がある自然治療薬として受け入れられています。今日の伝統医療の分野では、利尿、去痰、月経促進、解熱等の用途で利用されています。ブラジルでは、流産の防止、月経過多の緩和、子宮からの出血の治療なに、ホメオパシーではアブータはチンキとして利用されています。北米ハーブ医療では精巣の炎症の緩和や軽い肝臓障害にアブータを用いることが近年多くなりつつあります。その強烈な味覚にもかかわらず、アブータは伝統的に、葉、蔓、樹皮、根などを煎じてお茶としたり、他のハーブと一緒に薬草酒とされて広く親しまれています。内服することもできますし、患部へ直接塗布する利用法もあります。生理不順や生理痛の為の伝統的自然療法では一般的に、粉末状にした蔓あるいは根を1日1~2グラムか、4:1のチンキを1日1~2ml毎日服用すると効果的と考えられています。

【出典】
Bruneton, Jean. Parmaognosy, Phytochemistry, Medicinal Plants. Andover, England: Intercept Limited, 1995.
Werbach, Melvyn R., M.D., and Michael T. Murray, N.D. Botanical Influences on Illness-A Sourcebook of Clinical Research. Tarzana, CA: Third Line Press, 1994.
Blumenthal, Mark. "Plant medicines from the New World." Whole Foods Magazine (April 1997).
Kametani, T., M. Ihara, and T. Honda. Heterocycles 4 (1976): 483.
Guinaudeau, H., M. Leboeuf, and A. Cave. Lloydia 38 (1975): 275.
Marini-Bettolo, G. B. Acad. Geneeskund. Belg. 43 (1981): 185 (C.A. 96:129624t.
Anwer, F., et al. "Studies in medicinal plants 3. Protoberberine alkaloids from the roots of Cissampelos pareira Linn." Experientia (October 15, 1968).
Bhatnagar, A. K., et al. "Chemical examination of the roots of Cissampelos pareira Linn. V. Structure and stereochemistryof hayatidin." Experientia (April 15, 1967).
Bhatnagar, A.K., et al. "Chemical examination of the roots of Cissampelos pareira Linn. IV. Structure and stereochemistry of hayatin." J. Org. Chem. (March 1967).
Kupchan, S. M., et al. "Tumor inhibitors. VI. Cissampareine, new cytotoxic alkaloids from Cissampelos pareira. Cytotoxicity of bisbenzylisoquinoline alkaloids." J. Pharm. Sci. (April 1965).
Basu, D. K. "Studies on curariform activity of hayatinin methochlorids, an alkaloid of Cissampelos pareira." Jpn. J. Pharmacol. (June 1970).
Kondo, Y., et al. "Inhibitory effect of bisbenzylisoquinoline alkaloids on nitric oxide production in activated macrophages." Biochem. Pharmacol. 46 (1993): 1887/92.

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