チャンカピエドラ(CHANCA PIEDRA)
チャンカピエドラ(CHANCA PIEDRA)

Family (科名)トウダイグサ科
Genus(属名) Phyllanthus
Spieces(種名) niruri, amarus


使用部位

すべて

禁忌

チャンカピエドラには血圧を低下させる作用があることが動物と人体において確認されているので、心臓の薬を服用している場合は、摂取前に医師への相談が必要です。心臓の状態によっては禁忌となる場合があったり、服用薬の調整やモニターが必要となる可能性があります。
一部伝統医療では、チャンカピエドラを大量に摂取した場合、堕胎薬や生理促進剤として作用すると考えられています。人体における生理作用としては実証されていませんが、動物実験レベルでは子宮弛緩作用の裏づけが取られています。よって、妊娠期間中の摂取は禁忌と考えられます。
チャンカピエドラは女性に対する不妊作用があることを確認した動物実験が一つあります。(投与を中止してから45日後に作用が戻る)人体への生理作用としてのデータはありませんが、妊娠を望んでいる場合は不妊治療を受けている場合の使用は禁忌と考えられます。チャンカピエドラを避妊薬として使用するに十分な根拠はありませんが、注意は必要です。
チャンカピエドラには血糖を下げる作用があることが、動物と人体両方の実験で確認されています。よって、低血糖症の場合の使用は禁忌と考えられます。糖尿病の治療を受けている場合は、使用に先立ち医師への相談が必要です。
チャンカピエドラには利尿作用があることが、動物と人体の両方において確認されています。利尿作用が好ましくない病状の場合は、急性・慢性に関わらずチャンカピエドラの使用は禁忌です。チャンカピエドラを長期にわたり慢性的に使用すると、電解質とミネラルバランスが崩れることが考えられますが、これまでに公表されているリポートによると、3ヶ月を超えない範囲での使用では、人体に対し副作用がないと報告されています。3ヶ月以上に使用に際しては、長期間利尿剤を使用した場合の副作用について医師に対しアドバイスを求めてください。

薬との相互作用

インスリン等糖尿病治療薬と相互作用する可能性があります。
『ゲラニン』と呼ばれる植物成分が含まれています。『ゲラニン』には血圧低下作用があることが動物実験で確認されています。よって、高血圧薬や心臓病の薬と相互作用する可能性があります。

一般名

Chanca piedra, quebra pedra, stone-breaker, arranca-pedras, punarnava, amli, bhonya, bhoomi amalaki, bhui-amla, bhui amla, bhuianvalah, bhuimy-amali, bhuin-amla, bhumyamalaki, cane peas senna, carry-me-seed, creole senna, daun marisan, derriere-dos, deye do, erva-pombinha, elrageig, elrigeg, evatbimi, gale-wind grass, graine en bas fievre, hurricane weed, jar-amla, jar amla, kizha nelli, malva-pedra, mapatan,para-parai mi, paraparai mi, pei, phyllanto, pombinha, quinine weed, sacha foster, cane senna, creole senna, shka-nin-du, viernes santo, ya-taibai, yaa tai bai, yah-tai-bai, yerba de san pablo

異名

Phyllanthus carolinianus, P, sellowianus, P. fraternus, P. kirganella, P. lathyroides, P. lonphali, Nymphanthus niruri

チャンカピエドラとは

チャンカピエドラは真っ直ぐに成長する、高さ30~40センチの小さな一年草で、アマゾン、バハマ、南インド、中国を含む世界中の熱帯に自生しています。アマゾンや湿度の高い熱帯ではP.niruriがほとんど雑草のように生えているのをあちこちに見ることができます。P.amarusとP.sellowianusの生息地は主にインド、ブラジル、フロリダ、テキサス等の比較的乾燥した熱帯地域でP.amarus、P.sellowianus、P.niruriは外観的にも、植物科学成分組成的にも、民間伝承的利用法においても極めて類似しています。
Phyllanthus属には、600種類を超す低木、木、一年草、多年草があり、南北両半球の熱帯・亜熱帯に広く分布しています。P.amarus、P.sellowianus、P.niruriの3種類の植物は植物学的にきちんと分類がなされておらず、しばしばP.amarusとP.sellowianusがP.niruriの変種とみなされたり、P.amarus、P.sellowianus、P.niruriが同じ植物とみなされたり、それぞれの名前がまるで一つの種類の植物に対し言及しているかの如く互換的に用いらることが頻繁にあったので、現在ではP.amarusがP.niruriの一類型として分類し直されています。

民間伝承的利用法

チャンカピエドラとはスペイン語で石砕きの意味を持ち、これはアマゾン先住民がこの植物を胆石や腎石の治療に効果的に用いてきたことに由来しています。ブラジルでは、『ケブラ・ペドラ』又は『アランカ・ペドラ』と呼ばれ何れも『石砕き』と和訳することができます。アマゾンでの伝統的利用法としては、腎結石の他にも様々あり、主なところでは、せん痛、発作、糖尿病、マライア、赤痢、熱、流感、腫瘍、黄疸、膣炎、淋病、消化不良があります。現在では、地域に伝わる利用法に基づき、鎮痛、腸内ガス排出、消化促進、駆虫、穏やかな下剤として利用されています。
チャンカピエドラはそれが自生するすべての熱帯地域でハーブ薬として伝統的に利用されてきています。そしてその用途は多くの地域で共通性を持っています。主な用途としては腎結石、胆石を含む胆嚢・胆管・泌尿器系の症状、肝炎、風邪、流感、結核他ウィルス感染症、膀胱炎、前立腺炎、性病、尿路感染等細菌感染症、肝臓疾患、貧血、黄疸、肝臓癌があります。また、糖尿病や高血圧に用いられることも多く、利尿、鎮痛、消化促進、鎮痙攣、解熱、細胞保護の特性を生かすこともあります。

活性成分

1960年代以降チャンカピエドラの活性成分や薬効メカニズムについて多くのリポートが発表されています。チャンカピエドラは植物化学成分の宝庫で、特にPhyllanthus属植物特有の成分が多く発見されています。チャンカピエドラの活性成分の多くは、葉、茎、根に含まれているリグナン、グリコシド、フラボノイド、アルカロイド、エラジタンニン、フェニルプロパノイドに由来しています。リピド、ステロール、フラボノイドもチャンカピエドラ全体に含有されています。

生理作用に関するリサーチ

チャンカピエドラの伝統的利用法の中から先ず最初に注目されたのは腎結石に対する効能です。1990年ブラジルサンパウロパウリスタ医学学校で行われた人間とラットによる実験では、チャンカピエドラ茶を1~3ヶ月与えたところ、尿量が著しく増加し、ナトリウムとクレアチンの排出が起こり、石の排出を促進したとの報告があります。これがきっかけとなり、ブラジルでは腎結石治療に用いる自然薬としてチャンカピエドラの知名度が高まり、現在では多くの薬局でチャンカピエドラが取り扱われるようになっています。1999年チャンカピエドラエキスを用いた実験では、生体外条件で腎結石の構成要素である蓚酸カルシウム結晶形成を阻害する作用を示し、腎結石防止の可能性を示す結果が得られています。2002年に発表された生体内条件の実験では、膀胱に蓚酸カルシウム結晶を植え付けたラットに42日間チャンカピエドラ水抽出エキスによる治療を施したグループでは、蓚酸カルシウム結晶の形成や増加を著しく抑制し、石を排泄したケースもあったことを報告しています。2003年の生体外条件実験では、「初期段階において結石形成を阻害し、尿石症の治療又は予防の代替手段となり得る」と述べ、腎結石の防止に役立つ可能性が示唆されています。チャンカピエドラには鎮痙作用と子宮を含む筋肉弛緩作用に関する報告が1980年代中頃からあり、その中で「泌尿器系や胆管の筋肉が弛緩し、腎臓や膀胱の結石の排除を促進する」と推測されています。1990年のニコル・マックスウェルの報告によると、ドイツニュレンバーグのウォルフラム・ウィーマン博士がペルー産チャンカピエドラを用い行った治療では、100人以上の腎結石患者を対象に94%が1~2週間で結石を排除するのに成功したとあります。
伝統ハーブ医療に見られるチャンカピエドラの胆石治療への応用については、今のところその正当性について科学的な裏づけは取られていませんが、2002年にインド人研究者が発表した胆嚢機能に対しチャンカピエドラが及ぼす生理作用に関するリポートを参考にすることができます。このラットを用いた動物実験では、チャンカピエドラが胆汁酸分泌を増加し、胆嚢からの排泄を促進し、血中コレステロールを著しく低下させる働きについてリポートしています。1985年にはコレステロールとトリグリセリドレベルを低下させる働きについて、同様にラット実験で確認されています。
チャンカピエドラを高血圧の治療に用いてきたハーブ医療についても多くの研究者により確認作業がとられています。1952年の動物実験では、チャンカピエドラが犬の血圧を下げる作用(同時に利尿作用も)について報告されています。1988年には、血圧低下をもたらす作用因としてチャンカピエドラに含まれる『ゲラニン』(タンニン類)と呼ばれる成分に関する研究が発表されています。1995年には、インド人研究者が高血圧症の複数の患者に対しチャンカピエドラ葉粉末カプセルを投与し、最大血圧の著しい減少、尿量の著しい増加、尿と血清中ナトリウムの排出を報告しています。チャンカピエドラが人体に対し与える利尿作用に関する研究は1929年まで遡り、インドでは現在でも『プナルナバ』と言うチャンカピエドラタブレットが利尿剤として販売されています。
チャンカピエドラの血糖低下作用の裏づけとしては、先ほどの1995年の人体実験リポートがあり、チャンカピエドラが血中ブドウ糖レベルを著しく低下させたことを報告しています。また、糖尿病のラットとウサギに対しチャンカピエドラが及ぼす作用についてこれまで2つのリポートが公表されています。高血糖の状態が長く続くことによって発生する糖尿病の3大合併症の一つとして糖尿病性神経障害がありますが、これは末端神経が高血糖状態に長期間晒されることにより発生する神経障害です。神経障害を起こすとされている原因物質であるソルビトールアルドース還元酵素は、体内に存在している酵素で、血糖値が高くなると、体内にある余分なブドウ糖に作用し、ソルビトールを作り出します。ソルビドールの産生を抑えることで、疼痛やしびれ感などを改善する薬がアルビドール還元酵素剤ですが、チャンカピエドラにはアルドース還元酵素を阻害する働きがあるとする報告があります。アルドース還元酵素を阻害する作用因の一つとしてチャンカピエドラに含まれる『エラグ酸』(タンニン類)があり、エラグ酸については400を超える臨床実験で取り上げられ様々な効能が報告されています。
チャンカピエドラの鎮痛作用については、ブラジルの大学が研究課題として取り上げ、これまでに6つの研究論文が発表されています。1994年~1995年にかけて発表されたマウスを用いた動物実験に関する3つの論文では、チャンカピエドラのアルコール抽出エキスと水抽出エキスをマウスの経口、胃内、腹腔内に投与した結果、6つの異なった人為的に発生させた痛みのモデルに対し、強力且つ投与量に応じた鎮痛効果があったことを報告しています。ここでは経口投与量35mg/kgと極めて少量においてチャンカピエドラエキスに鎮痛効果が確認されています。次に行われた1996年の実験では、チャンカピエドラから血圧低下作用因としての機能を兼ね備える『ゲラニン』を抽出しテストし、アスピリンやアセタミノフェンよりも7倍高い鎮痛作用を示しています。引き続き、2000年には2つのリポートが公表され、新たに加えられた神経性の痛みを含めた複数の痛みのモデルに対する鎮痛効果がマウス実験で確認されています。一連の実験から、チャンカピエドラの鎮痛作用成分として『ゲラニン』の存在が確認され、脳内神経を伝わる痛み信号の受容や受渡しを司る神経伝達プロセスの一部を『ゲラニン』が阻害する作用について記されています。アスピリンには胃粘膜を傷つけ潰瘍の原因となる副作用がある一方で、反対に『ゲラニン』には潰瘍を防いだり胃腸機能を保護する作用があることが報告されています。チャンカピエドラは腎結石を患う多くの人に飲用されていますが、体内から結石を排出する手助けとして長期的視点から結石治療にチャンカピエドラを用いるだけでなく、結石による苦しい痛みを素早く和らげる方向でも作用するものと考えられます。
チャンカピエドラの肝臓保護作用についても、多くの臨床実験が行われチャンカピエドラの伝統ハーブ医療における用途の裏づけが取られています。上で述べたチャンカピエドラのコレステロール低下作用について実証を試みた同じ研究チームがラットを用いた実験を行い、チャンカピエドラがアルコールにより引き起こされたダメージから肝臓を保護し、"脂肪肝"を正常化する作用について報告しています。チャンカピエドラエキスが肝臓ダメージに対し様々な肝臓毒から効果的に保護する作用については、1つの生体外条件実験と4つの動物実験(ラットとマウス)からの報告に見ることができます。人体に対するチャンカピエドラの作用では、肝炎と黄疸の子供に対しチャンカピエドラの効果について2つの研究で発表されています。インドの研究者は、チャンカピエドラは子供の黄疸の治療に有効な薬草であると記しています。イギリス人研究者が急性肝炎の子供にチャンカピエドラエキスを投与し5日で肝臓機能が正常化したことを報告しています。中国では慢性肝炎の成人に対しチャンカピエドラ粉末900mgを1日2回用いたケースからチャンカピエドラの肝炎に対する効果について報告しています。
2000年に発表されたリポートによると、肝臓癌のマウスにチャンカピエドラ水抽出エキスを経口摂取させる実験が行われ、治療を受けなかったグループの寿命が33週間であったのに対し、エキスを投与したグループの寿命が52週間という結果がでています。また、予めチャンカピエドラ水抽出エキスを投与したマウスの肝臓癌の発癌実験では、チャンカピエドラの投与量に応じ発癌率が変動し、投与量を増やすに従い、発癌代謝酵素レベル、肝臓癌マーカー、肝臓障害マーカーが低下し、発癌率が低下する結果が得られています。これらの実験からチャンカピエドラには、癌細胞を選択的に殺傷する作用や直接的な抗癌作用よりもむしろ、癌細胞の増殖を抑制したり、癌細胞から肉体を保護する働きがあると考えられます。
ここで報告されているチャンカピエドラの抗癌作用については、チャンカピエドラの持つ抗突然変異性が重要な役割を演じていると考えられます。チャンカピエドラには、DNAの螺旋構造を破壊したり、細胞の突然変異体を作り出すことが知られている発癌性化学物質が存在するところで、肝臓細胞を含む細胞の突然変異を阻止したり、抑制する作用があることが、チャンカピエドラの水抽出エキスを使った複数の動物実験で実証されています。チャンカピエドラは、直接癌細胞(肉腫、癌腫、リンパがこれまで研究対象となっている)を殺傷するのではなく、癌細胞増殖や成長過程において特徴的にみられるいくつかの酵素プロセスを阻害すると指摘するリポートが発表されています。チャンカピエドラの細胞保護作用については、化学的に骨髄染色体損傷を負わせたマウスの実験と放射線で染色体損傷を負わせたマウス実験報告があります。後者のマウス実験では、4gyのガンマ線損傷に対し、マウスの体重に対し僅か25mg/kgの投与量でチャンカピエドラエキスがマウス染色体を保護する結果が得られています。
チャンカピエドラの抗ウィルス特性については、最も集中的に研究されている反面情報が錯綜している側面も持っています。チャンカピエドラが肝臓を保護する生理作用をもたらすことは、肝炎感染のケースも含めいくつかの動物と人体における実験で述べられています。チャンカピエドラがB型肝炎ウィルスに対し示す抗ウィルス特性については、生体外条件、動物実験、人体に対する作用すべてのレベルにおいてこれまで20を超える科学リポートが発表され、直接的に抗ウィルス作用を及ぼすことが示す結果がでていますが、各々結論には一貫性がなく、混乱が見られます。
肝炎に対する注目度は世界的に高く、多くの研究を精査し共通点を見つけ出す作業を行うに値すると考えます。B型肝炎(HBV)は肝臓癌(肝腫瘍)の主な要因の一つで、肝腫瘍の致死率は100%です。HBVキャリアーが感染後10年以内に肝臓癌を発生する確率は200倍に上ります。HBVと接触を持った人は多くの場合慢性キャリアーとなり(兆候がないことが多い)、更に伝染します。HBVはHIVの100倍感染しやすいとの報告もあり、HIV同様輸血や性交渉は言うまでもなく、母子感染の恐れもあります。HBVに関する統計では、米国人250人に1人はHBVキャリアーとショッキングな内容です。CDC(CENTER for DISEASE CONTROL and PROVENTION)によると、米国内のHBV感染者は推定100万人(全世界で300万人)で、毎年新たに20万人づつ増加していて、肝硬変による死者のうち3000~4000人、肝腫瘍による死者のうち1000人について、HBVとの関連を指摘しています。HBV抗原の発見で1963年にノーベル賞を受賞しているB.ブルームバーグ博士は、1988年にチャンカピエドラがHBV慢性キャリアーの状態をクリアーナップすると報告したことは大きな出来事でした。これが後にHBVが肝臓癌の第一要因であることの発見に繋がり、HBVワクチンの開発がスタートしました。
ブルームバーグ博士による初期の研究の多くはインドの研究グループと共同でインド国内で行われました。チャンカピエドラが人体に及ぼす生理作用に関する最初の研究は、チャンカピエドラ(Phyllanthus amarus)の水抽出エキスを用いて行われ、37症例中22の症例で30日以内にHBV表面抗原がクリアされたと報告されています。(9ヶ月間陰性反応がでた時点でこのリポートは公表されています)同研究グループは、これに先立ちモルモットによる生体実験や生体外条件での実験を繰り返し、すべての実験においてモルモットは慢性HBV感染に対し人間とほぼ同じく効果的な反応を示すことが確認されています。ブルームバーグ博士は米国フィラデルフィアのチェイス癌センター在任中、インド人研究者と共同でチャンカピエドラ(Phyllanthus nniruri)のHBVに及ぼす働きに関する特許と抗ウィルス作用に関する特許をそれぞれ1985年と1988年に正式に提出しています。最初の特許はHBVの治療に特化したもので、2番目の特許では、チャンカピエドラの抗ウィルス作用は強力な逆転写酵素阻害作用を通じて部分的に達成され、逆転写酵素により増殖をするレトロウィルスによる疾患の治療を可能にしていると述べています。(レトロウィルスはRNAウイルスのうち宿主細胞に入り込んだ後にゲノムRNAから直接遺伝情報を読み出すのではなく逆転写酵素によりいったんDNAを合成してそれを利用するタイプのもので、いくつかの腫瘍ウイルスやエイズの病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)やヒトTリンパ好性ウイルスI型、II型(HTLV-I,II)がこれに属する。B型肝炎ウイルス(HBV)はDNA→RNA→DNAと逆転写を経て複製するためレトロイドともよばれ、HIVの逆転写酵素阻害薬が効果を示すことがある)新しいエキス抽出法が開発されたのはこの頃です。この抽出法は複雑且つ多段階的なもので、まず最初にチャンカピエドラを冷水に浸しフィルターで濾した浸出液をヘキサンで抽出、次にベンゼンで抽出し、最後にメタノールで抽出し、水に戻します。この特許資料では、この抽出方法が記されていますが、抽出液に含有されている活性成分については判明していないと記しています。確かにこの手法によるエキス抽出は特許に値するものですが、この方法により抽出したチャンカピエドラエキスを利用し1990年代を通じ発表した数々の研究リポートでは、同グループがそれ以前に発表したリポーとト比較し生体内条件における試験でその有効性が確認されていないばかりか、内容的にも矛盾点が見られ、これら矛盾点がチャンカピエドラ(Phyllanthus nniruriとPhyllanthus amarus)の効能に関し混乱を引き起こしています。1994年、ニュージーランドの研究グループは、『ゲラニン』(鎮痛や血圧低下作用成分)の含有量を科学的に構成を組みなおすことにより標準化したチャンカピエドラ(Phyllanthus amarus)エキスを用意し、HBV感染者に対し二重盲式試験を行いましたが、有効な反応が得られなかったことから、否定的な内容のリポートを発表し、研究が中止されています。
一方、HBV感染者の多い中国では、チャンカピエドラのハーブパウダーと水抽出エキスを使用しHBV感染者における生理作用の人体試験を行った研究グループが良好な結果と共に肯定的な内容のリポートを1994年と1995年に発表しています。1995年のリポートではいくつかの異なったPhyllanthus属の植物か試験され、P.urinariaがHBV感染に対し最も良い結果を残しています。2001年発表の中国人研究者によるリポートでは、30人の慢性HBV患者に対しチャンカピエドラエキスを与え、25人に対しインターフェロン(IFN-alpha 1B)を与え、比較試験を行ったところ、どちらのグループも83%の有効性を示す一方、肝臓酵素(ALT,AG,SB)と肝臓機能の回復については、チャンカピエドラが著しく高い結果をマークしています。最後にコペンハーゲンのコフレイン肝臓・胆嚢リサーチグループは無作為に選択したHBVに関するリサーチの見直しを行いました。それによると、インターフェロンとの比較において「Phyllanthus属の植物による治療はHBVの表面抗原であるHBsAg血清のクリアランスに対し有効であり」、HBVや肝臓酵素回復のための治療法としては、他のハーブよりも優れているとj書いています。そして、各々のリサーチで公表されている効能や使用したハーブの種類の特定を含むリサーチ手法の標準化の欠落を根拠として、見直しを行ったリサーチの多くは正当化されるとも指摘しています。
特にHIVについては、日本の研究グループがチャンカピエドラのシンプルな水抽出エキスを使った生体外条件実験で、Phyllanthus niruriのHIV-1に対する逆転写酵素阻害作用を発表しています。(Ogata T, 1992 HIV-1 reverse transcriptase inhibitor from Phyllanthus niruri. AIDS Res Hum Retroviruses)このグループの研究では、チャンカピエドラが示した作用因を『レパンドゥシニック酸A』とし、個別にテストした時には、著しい逆転写酵素阻害作用を示し、2.5mcgの投薬HIV-1に対し90%の細胞毒性を示すことが確認されています。1996年には、ブリストル・マイヤーズ・スクウィブ・ファーマシューティカル・リサーチ・インスティテュートがチャンカピエドラから逆転写酵素阻害作用を持つ別の成分を抽出することに成功しています。この成分は、『ニルリシド』と呼ばれていて、1996年に発表された論文で描写されています。(Qian-Cutrone J, 1996 Niruriside, a new HIV REV/RRE binding inhibitor from Phyllanthus niruri) これら抗ウィルス作用に加え、チャンカピエドラには抗菌作用もあります。ブドウ球状菌、単球菌に対しては生体外条件の実験で、パスツレラ菌については生体外と生体内条件での実験でそれぞれ抗菌作用を示すことが確認されています。いずれも伝統的チャンカピエドラ利用法を肯定する結果が得られています。
チャンカピエドラは今後更に多くのリサーチをかけるに値する非常に価値の高い薬用ハーブですが、一方、複雑組み合わさった植物化学成分を豊富に含んだ植物が持つ典型的な問題を伴っています。資金力に富む大手製薬会社等が、莫大な研究開発費をカバーするために、特許取得可能な植物化学成分単体を分離するか特許取得可能なエキス抽出方法を考案することができなければ、チャンカピエドラに関するリサーチが進むことはないでしょう。これは極めて単純な話であって、特許につながることのない野草のエキス抽出に対し多額の投資を行う公的資金や非営利活動はありえないということです。チャンカピエドラが持つ多くの生理作用や効能は、多くの植物化学成分に帰するものですが、各々成分の相互作用については十分に実証されていません。また、ほとんどの成分は水溶性なので、利潤を目的とする研究活動の対象となりにくいといわざるを得ません。
しかしながら、チャンカピエドラは間違いなく優れたナチュラルレメディーの一つです。腎臓、胆石、細胞保護、肝臓保護、血圧調整、コレステロール調整、癌予防、鎮痛、抗ウィルス作用、多くの国でハーブ療法のメニューとして人気が高まりつつあります。過去20年以上にわたり発表されてきたチャンカピエドラに関するすべての研究リポートを見る限り、急性・慢性いずれの用途においても、動物・人体に対する毒性や副作用に関する報告は一切ありません。発癌性、突然変異性、遺伝毒性がないことが、動物実験で確認されています。

使用法


調製 :浸剤
作用 :腎結石予防・除去、肝臓保護、肝臓洗浄、利尿、抗ウィルス
適応 :腎結石、胆石治療、予防 、肝臓正常化、バランス調整、強化、解毒、保護(肝臓酵素のバランス調整)
ウィルス(肝炎A,B,C,HIV,ヘルペスを含む) 、腎臓正常化、バランス調整、強化、解毒、保護、尿酸の減少、尿量の増加
血圧低下、コレステロール低下
科学的手法により検証された適応 :
鎮痛、抗潰瘍、抗菌、肝臓洗浄、腎結石予防・除去、マラリア、抗突然変異(細胞保護)、鎮痙、抗ウィルス、避妊、利尿、胃腸強壮、肝臓保護、肝臓強壮、コレステロール低下、血糖低下、血圧低下、子宮弛緩
民間伝承的適応: 抗炎症、血液浄化、胃腸内ガス排出、体内浄化、発汗、解熱、通じ、生理活性、強壮、駆虫
注意: 妊娠期間中の使用は避けてください。糖尿病薬、高血圧薬、高コレステロール薬との作用を助長する可能性があります。

利用法


伝統的に浸剤として又は軽く煎じて飲用します。利用目的によりますが、1日1~3カップが摂取量の目安となります。プラクティショナーからの報告によると、腎結石の予防、健康維持が目的の場合は1週間に1~3カップ、石の排出には1日3~4カップ。ブラジル等南米では水抽出グリセリンエキスが販売されています。エキス濃度によりますが、1回2~6mlを1日2~3回が目安。カプセルやタブレットの場合は1回2~3gを1日2回。ほとんどの成分は水溶性で消化吸収し易いので、アルコールチンキは伝統的に利用されていません。

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