チュチュワシ(CHUCHUHUASI)
チュチュワシ(CHUCHUHUASI)

Family (科名)Celastraceae
Genus(属名)Maytenus
Spieces(種名)krukovii, laevis, macrocarpa, ebenifolia


使用部位

樹皮、根、葉

伝統的利用法

樹皮を煎じる場合:1日1~2カップを毎日、
1:4アルコールチンキ:1回3~6mlを1日2~3回

禁忌

報告がありません

薬との相互作用

報告がありません

一般名

Chuchuhuasi, chucchu huashu, chuchuasi, chuchasha, chuchuhuasha

異名

Maytenus ebenifolia, M. laevis, M. macrocarpa, M. multiflora, M. terapotensis, Celastrus macrocarpus, Haenkea macrocarpa, H. multiflora

チュチュワシとは

チュチュワシは、高さ30mにも達する林冠を持ったアマゾン産の巨木です。長さ10~30cmの大きな葉、小さくて白い花、そしてとてつもなく硬くて重い赤茶色の樹皮が特徴的です(1)。

チュチュワシの伝統的利用方法と効能

アマゾン熱帯雨林の先住民は、チュチュワシを長年にわたり医療目的で使用してきました。関節炎、リューマチ、腰痛等の解消の為に用いられてきたことから、現地ではチュチュワシを『震える腰』と呼ばれています(1)。チュチュワシの煎じ薬湯を1日3回、1週間以上続けて服用すると、関節炎やリューマチに効果があると言われています(2)。更にチュチュワシには筋肉の弛緩作用、媚薬効果、腎機能サポート、痛み止め、免疫力強化、月経サイクルの正順化などのホルモンバランス調整の効能があると考えられています(1)-(5)。特に媚薬、強壮等の効能に関しては、チュチュワシの樹皮をラム酒に浸け込んだ『アグアルディエンテ』というお酒が媚薬或いは強壮効果の高い健康酒として今尚広く普及しています。チュチュワシの持つ媚薬、強壮、精力増強といった効能に対する人々の信用は根強く、また『アグアルディエンテ』は、アマゾンを訪れる旅行者の間でも人気があります(3)(5)。一方、関節炎に対する効果については、ペルーアマゾンに住む先住民はもとより都市部で生活する人々の間でも知名度は高く、その効能については定評があり、チュチュワシこそ最良の治療薬と絶賛する人さえいる程です。コロンビアでは、2リットルの水に5cm程度の長さの小さな樹皮片を入れ、水の量か半分になる程度まで煮込んだものが、リューマチや関節炎の治療に使用されています。ペルーのハーブ医療では、骨関節炎、慢性関節リューマチ、気管支炎、下痢、痔核、生理痛などに効果的に用いられています(6)。また、アマゾンのシャーマン達は、チュチュワシと強壮作用や治癒促進の効能を持つその他の薬草と組み合わせることにより相乗効果を生み出す配合を生み出してます(7)。

チュチュワシの活性成分と研究

何世紀にも渡り利用されてきた長い歴史、そして絶大なる効能を持つことから、チュチュワシの効能メカニズムは、多くの研究者達の臨床的興味の対象となりました。1960年代米国の製薬会社により実施された実験では、チュチュワシを投与したマウスの食菌作用が、劇的に上昇するという結果が得られ、チュチュワシが持つ免疫強化特性(その製薬会社の特許となっている)が実証されています(8)。1970年代の中頃、イタリアの研究グループにより行われたリサーチでは、チュチュワシから抽出したエキスが、皮膚ガンの治療において効果的に用いられることが確認され、チュチュワシの抗腫瘍特性が実証されました(9)。1980年代に入ると、別のイタリアの研究者により、抗炎症作用が発見されています(10)。この研究では、チュチュワシの幹の樹皮から分離されたトリテルペンと抗酸化成分が少なくとも部分的に、チュチュワシの持つ抗炎症、放射線防御、抗ガン作用と関連している、とする結論付けています。1993年には日本の研究グループが、リューマチや関節炎の治療において有効とされているアルカロイドのグループを、チュチュワシから分離することに成功しています(11)。その後、チュチュワシの抗炎症特性と抗関節炎特性を調査していた米国の製薬会社が、チュチュワシに含まれているこれらのアルカロイドが、プロテインキナーゼC(PKC)の酵素生産を効果的に抑制することができる、ということを決定ずけました(12)。このPKCの酵素過剰生産が、リューマチ、喘息、脳腫瘍、ガン、心臓血管疾患等のを引き起こす要因である明らかな証拠があることから、新たに発見されたPKC抑制効果は、世界的に注目されています(13)。PKCを抑制するとされているチュチュワシの成分を合成することにより関節炎の新薬が開発されるのでは、と期待がにわかに高まっています。何世紀にもわたりアマゾン熱帯雨林で愛用されてきた、天然のチュチュワシから採取した樹皮のエキスは、関節炎に最も効果がある自然治療薬として引き続き利用されて行くことでしょう。

文献からの引用

Traditional Uses of Rainforest Botanicals, John Easterling

●効能:腎臓機能サポート、リビドー強化、リューマチ、免疫活性 ●民間伝承的利用法:チュチュワシのアルコール浸出液がリューマチや関節炎関連の症状に用いられている。熱帯雨林地域では一般的な薬用ハーブである。筋肉弛緩剤、乳酸除去としても有用。アマゾン川流域に住む人々はチュチュワシには男性生殖能力強化作用があると信じている。一般的な再生剤として認知されている。●MERIDIAN INDICATIONS:回春強壮、腎臓若返り、風邪薬

IMMUNE POWER from the Rain Forest, Kenneth Jones, Healing Arts Press, 1995

アマゾン西部ではチュチュワシの樹皮が一般的に用いられていて、特に都市部においてその人気は高い。最もポピュラーな利用用途としてリューマチがある。痛み止めとして用いる場合、サトウキビ酒に樹皮を一晩漬け込み、アルコールエキスとして飲用する。コロンビアのシオナ族では5センチ角の樹皮を2リットルの水で、水の量が半分程度になるまで煮出し、リューマチや関節炎の治療であれば小さなカップに一杯分の煮出し汁を1日3回飲用し、それを1週間継続する。また、チュチュワシの煮出し汁は興奮剤として用いられる場合もある。エクアドル東部のアマゾン熱帯雨林地域のキホス・キチュア族では、チュチュワシ樹幹部の煮出し汁が筋肉痛、リューマチ、胃痛や一般的な痛み止めとして用いられている。リューマチにはチュチュワシのアルコール漬けが時として用いられる。造血強壮剤として用いる場合は、赤みがかった内側樹皮部が用いられ、そのまま噛んだり或いは煎じて飲用されるが、何れの場合もかなり苦味を伴う。結核の回復過程、男性性機能不全、気管支炎、胃痛、発熱に用いられる。飲用する場合特に量的な制限は設けられていないが、朝食の食前に、1ヶ月以上の間継続しなければならない。

Witch-Doctor's Apprentice, Hunting for Medicinal Plants in the Amazon, Nicole Maxwell, Citadel Press, 1990

観光客向けの土産物屋があちこちでオープンし、チュチュワシに代表されるジャングルドリンクをメニューに加えるバーも増えてきている。おそらく、チュチュワシはペルーやコロンビアでは最も良く知られたジャングル産薬用ハーブであろう。アマゾン川流域では男性向けの飲み物としてアグアルディエンテに次いで人気がある。チュチュワシの根樹皮をホワイトラムやアグアルディエンテに1週間漬け込み、有効成分を抽出する。そうしてできたアルコールエキスは媚薬となり、年齢や病気が原因の男性性機能不全の治療において評価が高く、回春促進の効能も持つ。またチュチュワシのより重要な機能性としては、あらゆる種類のリューマチにも効果があり、男女問わず強壮剤としても用いられている。私自身、数ヶ月に渡り不定愁訴的に体調を崩していた二人の女性がチュチュワシにより体調を回復させるのを見たことがあるし、チュチュワシは、数あるリューマチ治療薬の中でも最高のものであるとの評価が多くの人々により与えられている。癌の治療に効果があるとする話や毒性の強い殺虫剤の使用を続けたことにより麻痺した腕の機能を、チュチュワシを数ヶ月に渡り服用のすることにより回復させたといったリポートがある。

The Healing Forest, Schultes, R.E, and Raffauf, R.F. Dioscorides Press, 1990

Celastraceae科は約50種類の属に分類され、800以上の種がある。大木もあれば、潅木やツル状の植物もあり、南北両半球に広く自生している。
Maytenus属には200種にも及ぶ常緑樹が分類され、南米や西インド諸島の温暖な気候や熱帯性気候の地域に自生していて、公園などに植樹されている場合もある。
西アマゾン一帯では、チュチュワシの樹皮は薬用ハーブとして知られている。アグアルディエンテに一晩漬け込んだチュチュワシの浸出酒は、リューマチの痛み止めや興奮剤として飲用されている。これは先住民というよりは寧ろ都市部に住む人々の間で人気のある利用法であり、都市部とあまり交流の無い先住民はチュチュワシをさほど重要な薬用ハーブとは認知していない。ブラジルのリオ・イカに自生するMaytenus属のある樹木の種衣には0.85%のカフェインが含有されていて、利尿剤として用いられている(Fiese, 1935)。ガルシア・バリガによると、シオナス族では、5センチ角のチュチュワシの樹皮を2リットルの水で1リットルになるまで煮詰めている。そしてその煮出し汁を、1回1カップづつ1日3回飲用し、それを1週間継続するとリューマチや関節炎が治る。また、興奮剤や媚薬としても利用価値が高い。

Cat's Claw, Healing Vine of Peru, Jones, Kenneth, Sylvan Press, Seattle, Washington, 1995

チュチュワシとは、アマゾン一帯に自生する頑強な樹木の幹や根の樹皮のことで、M. macrocarpa, M. laevis, M. ebenifolia等幾つかの学名が与えられている33。チュチュワシとは『震える腰』という意味を持ち48、その樹皮はアグアルディエンテに漬け込んだハーブ酒が関節炎やリューマチの治療薬として飲用されている27, 33。ペルーでは、チュチュワシのお茶が赤痢、下痢、胃痛、生理不順の治療に用いられている33。コロンビアのシオナ族では、5センチ角の樹皮を2リットルの水が1リットルになるまで煮詰め、1回1カップづつ、1日3回の飲用を1週間継続することにより、リューマチや関節炎の治療薬としている34。
1960年代には、米国の製薬会社がマウスによる実験で、チュチュワシの葉から抽出したエキスを経口摂取させたところ、強力な免疫活性効果が得られ、食作用(食細胞が細菌または他の異物を原形質内に摂取する現象)が著しく上昇した49。イタリア・ローマのカトリック大学の研究班は、チュチュワシの樹皮をアルコールの浸出液が皮膚がんの治療に用いられている。成分分析ではチュチュワシのには自然発生抗癌物質であるTingenoneやPristimeran、Triterpnesとして分類される複合物が発見されている50。
チュチュワシの民間伝承的利用法の根拠となるところの活性成分に関する研究については、イタリアのS.CUORE DEL CATTOLICA大学の研究グループが1982年に発表したリポートにより取上げられていて、コロンビア産チュチュワシ(M.Laevis)の幹樹皮から抽出したエキスが決定的な抗炎症作用示すことが確認されている。一方、根樹皮に含有が確認されている成分を踏まえて、幹樹皮の水抽出エキスによる抗炎症作用と放射線防御作用は、カテキンタンニンやプロシアニジンといった抗酸化成分に由来するということが同研究グループにより確認されている。また、チュチュワシに含まれているトリテルペン(Tingenone and 22-hydroxytingenone)が抗癌作用を示したことが、チュチュワシが伝統的に皮膚がんの治療に用いられていることを説明する根拠と考えられている51。
1993年に東京薬科大学の研究グループがチュチュワシから多数のアルカロイド成分を抽出することに成功したことから、改めてチュチュワシに対する関心が高まった。この研究グループは、ペルーの先住民が『赤茶色の樹皮』をラム酒(アグアルディエンテ)に漬け込み、朝食前に飲用することでリューマチの治療に用いている点について特に言及している52。数年の内にチュチュワシからより強力な有効成分の抽出に成功する研究グループが出現することが期待されている。米国では、ノースカロライナ州デューハムのスフィンクスファーマシューティカルコーポレーションがチュチュワシに興味を示し、エクアドル産チュチュワシ(Maytenus krukovii)の樹皮を使い、(PKC)プロテインキナーセCの抑制成分にフォーカスを絞り研究が行われている53。過大活動状態にあるPKC酵素が多くの発病プロセスに関与しているとする証拠が発見されていることから、PKC酵素の抑制成分には今日多大な関心が寄せられている。PKC酵素が関係していることが明らかな病気としては、リューマチ、関節炎、喘息、脳腫瘍、癌、心臓血管疾患などが挙げられる54。

【出典】
Kenneth Jones, 1995. Cat's Claw: Healing Vine of Peru., Sylvan Press
Schultes, Richard Evans and Robert E. Raffauf, 1990., The Healing Forest, Medicinal and Toxic Plants of the Northwest Amazonia (Portland, OR Dioscorides Press).
Duke, James A. and Rodolfo Vasquez, 1994., Amazonian Ethnobotanical Dictionary (Boca Raton, Fl: CRC Press): 114.
Easterling, John., 1992., Traditional Uses of Rainforest Botanicals
Maxwell, Nicole, 1990., Witch Doctor's Apprentice (New York, NY: Citadel Press):363-381.
Kember Mejia and Elsa Reng, 1995. Plantas medicinales de uso popular en la Amazonia Peruana. AECI and IIAP, Lima, Peru.
Taylor, Leslie, 1997. Personal field notes with Curandero Jose Fuerra Cabrerra near the village of Tam Hisaco, September 1997.
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Bradshaw, D. et. al., "Therapeutic Potential of Protein Kinase C Inhibitors," Agents and Actions 38 (1993): 135-147
27. Maxwell, Nicole, Witch Doctor's Apprentice (New York, NY: Citadel Press, 1990): 363-381. 33. Duke, James A. and Rodolfo Vasquez, Amazonian Ethnobotanical Dictionary (Boca Raton, Fl: CRC Press, 1994).
34. Schultes, Richard Evans and Robert E. Raffauf, The Healing Forest, Medicinal and Toxic PLants, of the Northwest Amazonia (Portland, Or: Dioscorides Press, 1990).
49. DiCarlo, F. J. et al., "Reticuloendothelial System Stimulants of Botanical Origin," Journal qf the Reticuloendothelial Soctity 1 (1964): 224-232.
50. Martinod, P. et al., "Isolation of Tingenone and Pristimerin from Maytenus chuchuhuasha, " Phytochemistry 15 (1976): 562-563.
51. Gonzalez Gonzalez, J. et al., "Chuchuhuasha-A Drug Used in Folk Medicine in the Amazonian and Andean Areas. A Chemical Study of Maytenus laevis, " Journal, of Ethnopharmacology 5 (1982): 73-77.
52. Itokawa, H. et al., "Oligo-Nicotinated Sesquiterpene Polyesters from Maytenus ilicifolia," Journal of Natural Products 56 1993 : 1479-1485.
53. Sekar, Kumara V. S. et al., "Mayteine and 6-Benzoyl-6-deacetylmayteine from Maytenus krukovii," Planta Medica 61 (1995): 390.
54. Bradshaw, D. et al., Therapeutic Potential of Protein Kinase C Inhibitors, " Aqents and Actions 38 (1993): 135-147."

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