Family (科名) Fabacae マメ科
Genus(属名) Hymenaea
Spieces(種名) courbaril
使用部位
樹皮、葉、樹脂
伝統的利用法
樹皮を煎じる場合:1回0.5~1カップを1日1~3回。
1:4アルコールチンキ:1回1~3mlを1日2回。
皮膚や指にできた真菌感染症には、アルコールチンキや濃く煮出した茶を水や少量のリンゴ酢で希釈し、患部に直接塗布、イースト感染症の場合は圧注する。
禁忌
ジャトバの葉には血糖低下作用があるので、低血糖症の場合や血糖値を下げる薬剤との併用には専門家による管理が必要。
薬との相互作用
報告なし
一般名
Jatoba, jatoba, stinking toe, algarrobo, azucar huayo, jatai, copal, Brazilian copal, courbaril, nazareno, Cayenne copal, demarara copal, gomme animee, pois confiture, guapinol, guapinole, loksi, South American locust
異名
Hymenaea animifera, H. candolleana, H. multiflora, H. resinifera, H. retusa, H. stilbocarpa, Inga megacarpa
ジャトバとは
ジャトバは、高さ30m位まで成長する林冠を持った大木で、アマゾン熱帯雨林と中米の熱帯気候の地域に見られます。葉は明るい緑色で大きく、小さくて香りの良い白い花をつけます。ジャトバは食べることのできる茶色い楕円形で莢状の実をつけますが、その味と香りは時に『悪臭を放つ爪先』とも称され、決して美味とは言えないようです。ペルーアマゾンでは、『アスカル・ワーヨ』、ブラジルでは『ジャトバ』と呼ばれています。Hymenaea属には24種類の巨木が属していて、南米の熱帯気候地域からメキシコ、キューバにかけて自生しています。ジャトバを含む数種類のHymenaea属の植物は利用価値の高い樹脂を出します。ジャトバの木の根本には、オレンジ色のベトベトしたゴム様の樹脂が積もり、それを掘り出して火をつけると良い香りのするお香として利用したり、ワニス製造に利用されたします。また、薬用としての用途もあります。アマゾンの先住民たちは、このコーパル樹脂を宗教的儀式や結婚式のような社会的イベントで利用したり、媚薬(ほれ薬)として利用していました。Hymenaeaという分類名は、ヒュメーン或いはフュメナイオス、ギリシャ神話に登場する婚姻の神に由来しています。Hymenaeaの樹脂は、長い年月を要求する驚くべき化学的プロセスを経て琥珀へと変化します。樹脂が琥珀へと変化を遂げる過程で、揮発性のモノキテルペンやセスキテルペン等の植物化学成分は樹脂から浸出し、不揮発性のジテルペン化学成分が互いに結合し、自然の崩壊系に対し抵抗力を持つ硬質のポリマーとなり、時の流れに打ち勝つのです。
ジャトバの伝統的利用方法と効能
ジャトバはアマゾン先住民により利用されてきた長い歴史があります。ペルーのカラハ族やギアナのクレオレ族は、ジャトバの樹皮を水に浸しほぐして下痢止めとして使用しています(6)。ペルーアマゾン一帯では、樹皮、樹液、樹脂、葉が膀胱炎、肝炎、前立腺炎、咳の自然薬として用いられています(6)。ブラジルアマゾンでは樹液が気管支炎や咳に、樹皮が水虫や胃の薬として使われています(7)(8)。ジャトバはアマゾン先住民により使用されてきたばかりでなく、南米都市部においても伝統医薬として重宝されてきた歴史があります(4)(5)。ジャトバの薬効が最初に記録されたのは1930年のことで、モンテイロ・シルバ博士は自身の著書の中で、ジャトバの樹皮に胃腸のガスを排出する作用、鎮静作用、アストリゼント性があると紹介し、血尿、下痢、赤痢、消化不良、疲労、便秘治癒における使用を推奨しているます。一方、樹脂については上部気管支系或いは心肺機能に関わる不調での使用が推奨されています。また、同氏はジャトバ茶の効能として、食欲促進、疲労回復、強壮作用について言及しています(9)。1965年になるとブラジルでジャトバの液体エキス(Vinho de Jatoba)が発売され、滋養強壮、栄養補給剤として広く受け入れらることとなりました(10)。ブラジルのハーブ医療では、ジャトバは今日でも1930年当時と変わらぬ効能があるとみなされ、樹皮と樹脂の利用が推奨されています(11)(12)。ジャトバ樹皮から作るお茶は今日でも人気のある飲み物で、特にきこり等肉体的重労働につく人々の間では、長時間労働も疲労感を感じることなく続けることができる天然の強壮剤、として定評があります(13)。パナマの伝統医療では、ジャトバの実が口内炎に、葉や幹が糖尿病の治療に用いられています。米国では、天然の強壮剤、喘息や喉頭炎、気管支炎など呼吸器系の不調の治療薬、充血緩和剤、膀胱炎や関節炎、前立腺炎、菌による感染症の治療に(14)、また自然のエナジートニックとして、或いは喘息、気管支炎、喉頭炎など呼吸器系の不調、充血除去、殺菌、止血、滑液包嚢炎、菌類の感染症、膀胱炎、関節炎、前立腺炎などの治療に用いられています(15)-(17)。ジャトバの毒性について報告している研究リポートはありません。ジャトバ樹脂を外用薬として用いた場合、軽いアレルギー反応が現われる可能性について言及したリポートがあります。
ジャトバの活性成分と研究
ジャトバの植物化学成分に関する多くの研究実績により、ジャトバにはジテルペン、セスキテルペン、フラボノイド、オリゴ糖を含む活性成分が豊富に含まれていることがわかっています。ジャトバを構成している植物化学成分は、コパイーバ(アマゾン原産樹木で樹脂に高い利用価値がある)に類似しています。コパリック酸、デルタカジネン、カフィオフィリン、アルファフムレン等、ジャトバ、コパイーバに共通して含まれる成分は、著しい細胞毒性、抗菌性、抗真菌性、制癌性を持つことがこれまでに実証されています。ジャトバの樹皮に含まれているアチルビンと呼ばれるフラボノイドが、抗酸化効果や肝臓保護特性を生み出すことが1997年発表の臨床研究で明らかにされています(28)(29)。ジャトバにはテルペンやフェノールが含まれていますが、これらの成分はキノコや菌類から自らを保護する機能を担っています(18)(19)。ジャトバの持つ抗菌作用とテルペンやフェノールの因果関係について述べている複数の研究リポートがあります(20)-(22)。事実、ジャトバは、高温多湿の熱帯雨林環境に自生している植物の中、カビやキノコがほとんど付着していない美しい幹をこれみよがしに誇る数少ない樹木の一つです。1970年代初期に実施されたジャトバの葉、樹皮、樹脂を用いた臨床実験では、その抗菌、抗ウィルス、抗バクテリア作用などが解明され、南米各国におけるジャトバの伝統的利用方法が有効であることが、実証されています(23)-(27)。更に、ジャトバの葉から抽出した水性エキスには、著しい血糖低下作用があることが実証されています(27)。ジャトバが急性・慢性膀胱炎や前立腺炎の治療に良い結果をもたらしていることが多くのプラクティショナーにより報告されています。膀胱炎や前立腺炎の慢性的症状の多くはしばしば、本質的に細菌によるものではなく、寧ろ真菌が原因となっている可能性を発見しつつあります。こうした症状に対する抗生物質を用いた治療は、真菌を駆逐してくれるはずの良性の菌までも殺してしまい、結果的に慢性的症状を作り出す原因となる可能性が指摘されています。慢性膀胱炎や前立腺炎の症状においてジャトバがスピーディ且つ劇的に反応した場合、それは、ジャトバの持つ抗菌性ではなく、抗真菌特性が機能したものと考えられます。
ジャトバに関する引用
HERBS OF THE AMAZON Traditional and Common Uses, Dr. Donna Schwontkowski, Science Student BrainTrust Publishing, 1993
ブラジルの熱帯雨林地帯では、材木の切り出し人がこのジャトバを強壮剤或いはエネルギー源として利用しているが、特に厳しい労働環境において精力的且つ力強くあり、食欲を増進させ、生産的であり続ける為にジャトバ茶が飲まれている。慢性の咳、喘息、虚弱肺、喉頭炎、気管支炎等の呼吸器系疾患に効果的である。その他の利用法としては、出血、滑液包炎、膀胱の感染症、イーストや菌性感染症、膀胱炎、関節炎、前立腺炎等がある。
Powerful and Unusual Herbs from the Amazon and China, The World Preservation Society, Inc. 1993,1995
ジャトバは尿道の鬱血を緩和し、膀胱炎や前立腺炎に優れた効果を持つ。鬱血除去剤、強壮剤としての利用の歴史がある。
Traditional Uses of Rainforest Botanicals, John Easterling
効能:尿道の鬱血の除去、膀胱炎や前立腺炎の治療支援、膀胱の抗炎症、強壮
民間伝承的利用法:自然強壮剤として重宝されてきている。強壮剤としての利用以外では、膀胱炎、前立腺炎、膀胱関連の疾患や呼吸器系疾患の治療に対する利用が挙げられる。
Meridian Indication :血液のよどみの解消、炎症除去、解毒、痛みを伴う排尿の緩和
A Pocket Book of Brazilian Herbs, Antonio Bernardes, Editora e Arta Ltda, 1984
ブラジルにおける民間伝承的利用法:ジャトバ茶は自然の強壮剤。モンテイロ・シルバ博士によると、ジャトバ茶を飲めば誰でも、「力強く且つ精力的な感覚を覚え、食欲も増進され、仕事への意欲が湧く」。ブラジルの木材切り出し人達は、ジャトバ茶やジャトバエキスを壺に入れ携帯し、日中仕事の合間に飲み、活力源としている。強壮剤や精力剤としての利用法の他に、急性・慢性膀胱炎の治療において著しい成果をあげている。ジャトバに少量のハチミツを混ぜて飲むと、気管支炎、慢性咳、喘息等呼吸器系疾患にも良い。また、ジャトバの樹液は、外用薬として痛み止めに用いられる。
効能:膀胱炎、前立腺炎、気管支炎、喘息、慢性咳、強壮剤、精力剤 ホメオパシーではマザーチンキとして用いられている。
Amazonian Ethnobotanical Dictionary, James A. Duke and Rodolfo Vasquez, CRC Press, Inc., 1994
学名 - Hymenaea courbaril L. Fabaceae
一般名 - アルガロボ (Algarrobo)、アスカルワーヨ (Azucar huayo)
ブラジルでは、ジャトバの樹液が咳薬として飲まれている。樹皮の煎じ汁は水虫に効果的。ブラジルに入植してきたクリオールはジャトバの浸出液を下痢止め薬として飲んでいる。ジャトバの古い切り株から取れる樹液は火口として用いられる。
Footprints of the Forest, Balee, William, Columbia University Press, 1994
二次的食料源 - 実・種 食用可能
薬用 - 虫下し
薬用 - 傷や目の痛みに外用薬として
薬用 - 過度の生理出血時に経口摂取する。
The Healing Forest, Schultes, R.E, and Raffauf, R.F. Dioscorides Press, 1990
Hymenaea属には24種類の背が高くて、枝の無い、樹脂を分泌する樹木が属していて、南米、メキシコ、キューバの熱帯地域に分布しているが、種形成の中心はアマゾンにある。いくつかのHymenaea属からは素晴らしいワニス樹脂が取ることができる。Courbaril種は黄色やオレンジ色の樹脂状のゴムを持ち、樹の根元付近で固まりとなったものが採集される。採集されたゴムは、教会ではお香として利用されている。テルペンやフェノール類は葉カビの生育を抑制する働きがある。
【出典】
Schultes, R.E., and Raffauf, 1990. The Healing Forest. Medicinal and Toxic Plants of the Northwest Amazonia, R.F. Dioscorides Press, 1990.
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