ヘルゴンサッチャ(JERGON SACHA)
ヘルゴンサッチャ(JERGON SACHA)

Family (科名) サトイモ科
Genus(属名) Dracontium
Spieces(種名) longipes, loretense, peruviuanum, asperum


使用部位

根、根茎

利用法

ペルーのハーブ医療では、根茎ドライパウダー1回2~3グラムを1日2~3回、根茎チンキ1回2~3ミリリットルを1日2回。

禁忌

報告なし

薬との相互作用

報告なし

一般名

Jergon sacha, fer-de-lance, sacha jergon, hierba del jergon, erva-jararaca, jararaca, jararaca-taia, milho-de-cobra, taja-de-cobra

異名

Dracontium spruceanum, D. carderi, D.costaricense, D. ornatum, Cyrtosperma spruceanum, Echidnium spruceanum

ヘルゴンサッチャは地中植物で、若木のような長い茎が根からまっすぐに立ち上がり、先端に深く割れ込みの入った一枚の巨大な葉をつけます。熟すると、根元から花梗が高さ1~2メートルのところまで頭を擡げ、先端には沢山のベリー状に群がる種を内包した一枚の花びらのようなさやをつけます。この花はカラジュームやディーフェンバッキアを大きくしたようにも見えます。ヘルゴンサッチャは高さ2~4メートルにも及ぶ巨大な多年草です。南米を含むラテンアメリカの熱帯地方には、13種類に及ぶDRACONTIUMが自生しています。アマゾンに自生するDracontium longipes, D. loretense, D. peruviuanum, and D. asperum. はほとんど見分けがつかず、それぞれ薬用ハーブとして互換的に利用されています。ブラジル、ギアナ、スリナムでは、D. asperumが、ペルー、コロンビア、エクアドルでは、D. longipes, D. loretense, D. peruviuanumが主に用いられています。

民間伝承的利用法

ヘルゴンサッチャは民族植物学的に注目されているハーブの一つです。先住民による伝統的利用法は、ヘルゴンサッチャの外観と直接的に関係しています。ヘルゴンサッチャのまだら模様の入った幹のような茎は、毒蛇と見紛うほど類似していて、ペルーやエクアドルでは、地元に生息する毒蛇も同様にヘルゴンサッチャ(又はフェルデランセ)と呼ばれています。ブラジルでは、この毒蛇をジャララカと言いますが、ヘルゴンサッチャにはエルバ・ジャララカ(ジャララカ・ハーブ)と言う名前が与えられています。これらヘルゴンサッチャの一般名は、すべてBothrops属の猛毒蛇に言及するもので、アマゾンにはヘルゴンサッチャの名前の由来となっている"Bothrops jararaca"を含む何種類かのBothros属の毒蛇が生息しています。
アマゾン熱帯雨林一帯では先住民も入植者もその土地の人々は皆、ヘルゴンサッチャの巨大な根茎を毒消しとして毒蛇に噛まれた時に利用しています。素早く刻んだ根茎を冷たい水に浸し、それを経口摂取します。更に細かく刻んだ根茎をバナナの葉の上において、毒蛇に噛まれた傷口周辺にあてがい、1~2時間ごとに交換する一方、3~4時間毎に根茎を食します。この治療法を毒蛇に噛まれた直後(1~2時間以内)に施すことにより、その効果・信頼性は著しく高まります。アマゾンの奥地では、冷蔵保管が必要な毒蛇血清を入手するのは極めて難しいので、ヘルゴンサッチャによる毒消しが開発され、代々伝承され、今尚利用されているのです。ギヤナの先住民族は、淡水エイ、毒蜘蛛、『クラレ』と呼ばれる毒矢(植物や蛇や蛙等の毒を矢の先端に付ける)の毒消しにもヘルゴンサッチャを調製し利用しています。また、ヘルゴンサッチャの葉や茎を足に打ち付けると、蛇に噛まれるのを予防する効果があると信じている先住民文化も存在します。
ヘルゴンサッチャが南米のハーブ医療に登場したのは、毒消し以外の用途によるものした。ブラジルハーブ医療では、喘息、百日咳、生理不順の治療にヘルゴンサッチャの根茎を粉末調製し、経口摂取します。疥癬の治療にも、ヘルゴンサッチャの根粉末を局所的に用います。また、ハエによりできた傷口には、毒蛇の治療と同様に、根茎から搾り取ったジュースを外用薬として傷口に直接つけます。痛風の治療には、ヘルゴンサッチャの全草を煎じ入浴剤として用います。ヘルゴンサッチャはペルーのハーブ医療でもよく知られた存在です。ペルーの都市部では、カプセル、チンキ、タブレットと言った形態で、エイズ(HIV)、癌腫瘍、消化器系の不調、ヘルニア(煎剤を外用薬として直接患部へ)、手の震え、動悸に対するナチュラルレメディーとして、自然食品店や薬局、市場などで販売されています。
ヘルゴンサッチャをエイズ(HIV)の治療に用いる動きは1990年代初期にペルーで始まりましたが、これは、ペルー・ソーシャルセキュリティー・インスティテュートのエイズ・伝染病委員会の代表であったロベルト・インチュアステギ・ゴンザレス博士について書かれた記事が雑誌や新聞等のマスメディアに掲載されたことが発端となっています。メディアは、1989年から1993年にかけて博士が行ったエイズ患者の治療において2種類の薬草エキスを使い、著しい効果を挙げたと伝えています。一つはヘルゴンサッチャ根茎で抗ウィルス作用を利用し、もう一つはキャッツクロー(ウンカリア・トメントーサとウンカリア・ギアネンシスの2種類)で、免疫力強化作用を利用しました。インチュアステギ博士は、治療を行ったエイズ患者の多くは、HIVウィルステストで陰性を示し、平均6ヶ月の治療期間の後、日常生活に戻ったと報告しています。しかしながら、一連の実験結果については、今のところ公表されていません。過去10年間、イキトスにおけるインチュアステギ博士によるエイズ患者治療実験は、度々ニュースとなりメディアに登場し、HIVウィルスやその他のウィルスに対するヘルゴンサッチャの利用を主張し続けました。一連の報道が後押しする形で、ペルーにおけるヘルゴンサッチャ関連商品の売り上げは伸び、1990年代後半になると、東欧に飛び火しました。
毎年何千キロものヘルゴンサッチャの根茎が、ロシアやポーランド等東欧諸国へ輸出されました。大量出荷が続いたことが、ヘルゴンサッチャの栽培・収穫方法の研究を助長し、過去5年間でペルーの2つの大学が環境負荷の少ない持続可能な栽培方法を開発に成功しています。コカの代替農地や伐採されてしまった熱帯林の有効活用手段として、ヘルゴンサッチャの有機栽培プログラムが実施され、地元農家にとっては貴重な現金収入となっています。

活性成分

初期段階のスクリーニングテストでは、ヘルゴンサッチャの根茎に含まれる成分として、アルカロイド、フラボノイド、フェノール、サポニン、ステロール、トリテルペン、スターチが示されていますが、科学的な手法による裏づけはとられていません。

生理作用に関するリサーチ

需要は年々高まっているにも関わらず、ヘルゴンサッチャの生理作用に関する研究リポートはこれまでのところ公表されているものはありません。ヘルゴンサッチャの伝統的利用法である、毒蛇に噛まれた時の毒消しの効果のメカニズムが科学的手法により明らかになれば、HIVに対する抗ウィルス性に対する合理的説明につながるかもしれません。『プロテアーゼ抑制剤』というHIV治療のために開発された最新の治療薬があります。プロテアーゼ抑制剤は、『プロテアーゼ酵素』というHIVウィルスの活性要素の活動をブロックすることにより作用します。プロテアーゼ酵素がブロックされると、HIVウィルスは、新しい細胞に感染する能力のない不良コピーを作り出します。現在主流となっているエイズ治療では、プロテアーゼ酵素が増殖する能力を失った後に、プロテアーゼ抑制剤とウィルスを直接殺傷する薬の組み合わせ使用します。プロテアーゼは、正常な活性細胞であればどこにでも存在する、プロテインを消化する酵素です。
プロテアーゼは蛇毒に含まれる主要成分の一つであることは良く知られた事実です。毒蛇に噛まれたところは、蛇毒に含まれるプロテアーゼ酵素の働きにより、最初打身のように傷つき、次に膨らみ、皮膚が崩れ落ち、酵素による細胞消化が進むと、壊死が始まります。蛇毒に含まれるプロテアーゼ酵素の力と量が直接的に、患部の皮膚や細胞にダメージを決定します。以上の理由から、毒蛇に噛まれた時に毒消しとしてその効果が立証されているハーブレメディー(特に噛まれた幹部に直接外用薬として利用するレメディー)は、自然のプロテアーゼ抑制剤でもあるのです。事実、新薬開発を目指し、アマゾンで薬草調査に関わっている製薬会社の研究者達は、先住民が毒消しとして伝統的に利用しているハーブに興味をもっているのは、唯一この理由のためです。インチュアステギ博士は、ヘルゴンサッチャによるエイズ患者治療実験で、自然界に存在するプロテアーゼ抑制因子に遭遇していたのかもしれません。ヘルゴンサッチャが示す抗ウィルス特性や毒消し作用のメカニズムを客観的に立証することが待たれています。

使用法

調製 :冷水浸出、アルコールチンキ、カプセル
作用:抗ウィルス、毒蛇毒消し、咳止め、ウィルス感染の場合プロテアーゼ抑制、抗炎症
適応: 毒蛇に噛まれた時の毒消し ウィルス感染症(HIV、肝炎、百日咳、インフルエンザ、パボウィルス...) 咳、気管支炎、喘息等上部呼吸器系の疾患
毒蜘蛛、蜂、サソリ等に刺された場合 、局所的な傷治療
科学的手法により検証された適応: 報告がありません
民間伝承的適応: 抗炎症、抗癌、毒消し、咳止め、抗ウィルス、利尿、免疫活性、殺虫
注意: 報告がありません

注 : 当ウェブサイトに含まれている情報は、啓発的或いは教育的なところを目的として紹介しているものであり、病状の診断、療法の処方、病気の治療など適切な医療行為の代替としての使用を意図するものではありません。