マカ(MACA)
マカ(MACA)

Family (科名)アブラナ科
Genus(属名)Lepidium
Spieces(種名)meyenii


使用部位

伝統的利用法

アンデスのマカ産地では、一日に最大400~500gのフレッシュ或いはドライマカが食されることがあります。
米国のハーブ医療では、一日あたり5~20gのマカをパウダー、タブレット、カプセルの形状で摂取することが薦められています。
最も経済的なのがパウダーで、ジュース、スムージー、ミルクにティースプーン2杯(約5.5g)のパウダーを入れて摂取することが可能です。

禁忌

報告がありません。

薬との相互作用

報告がありません。

一般名

Maca, Peruvian ginseng, maka, mace, maca-maca, maino, ayak chichira, ayuk willku, pepperweed

異名

Lepidium peruvianum, L weddellii, L. affine, L. gelidum

マカは標高2400~4350メートルのアンデスの高地で栽培されている多年性植物で、高地栽培されている植物の中でも最も高い耐霜性を持つ植物の一つとして知られています。マカは背が低く地を這うように成長し、扇形に広がる葉とアブラナ科特有の小さな自家受精性の白い花が特徴です。食用として用いられるのはカブのような根の部分で、直径8cm位まで成長し、根の色は様々ですが、比較的白や黄色が多く、茶色、紫色の種類も稀にあります。多くの塊根植物とは異なり種で増殖し、多年性であるにもかかわらず、一年草として育てられ、根は7~9ヶ月かけて収穫できるサイズにまで成長します。学名『レピディウム・メイェニ』は1843年ゲルハード・ワルパーズにより描写されたものですが、今日栽培されているマカは、『レピディウム・ペルービアン・チャコン』という比較的新しい種であることが、1960年以降ペルーワンカーヨ県サンファン・デ・ラ・ハルパ地区で収集された標本に基づいた調査で判明しています。1994年当時50ヘクターールに過ぎなかったマカの栽培面積は、主に海外での需要拡大から1999年には1200ヘクタールにまで拡大しています。
マカが育つアンデス高地は、強い風が吹きつけ、紫外線が強く、昼夜の寒暖の差が激しく、岩が多く、土壌は痩せています。農業には適さず、植物にとって苛酷な環境に対し、マカは長い年月をかけて適応してきました。マカは2000年以上前から栽培が行われており、初期の栽培品種が紀元前1600年の考古学サイトから発見されています。

民間伝承的利用法

アンデスの高地以外ではほとんど育つことのないマカは、標高の低い地域との交易において、米、トウモロコシ、野菜、豆等と交換することのできる、貴重な商品として扱われていました。乾燥したマカの根は7年もの年月の貯蔵に耐えることから、保存食としても用いられていました。マカは食用・薬用様々な用途で、プレインカの時代から利用されてきた伝統があります。成分的には、果糖類、プロテイン、スターチ、鉄分、ヨード等必須栄養素を多く含み、アンデスで栽培されてる植物の中でも最も優れた栄養値を示します。マカの根はフレッシュでもドライでも食することが可能で、フレッシュはピリッとした辛味と甘み、ドライはバタースコッチのような甘い風味が特徴です。
マカはペルーの朝鮮人参との異名を持ち(植物学的には朝鮮人参とは異なる)、エネルギー豊富な植物として古くから知られています。マカの最大の特徴の一つである、動物や人の生殖能力を高める機能性については、欧州列強による南米植民地政策が始まった直後、スペイン人が母国から連れてきた家畜がアンデスの厳しい環境に順応できず生殖能力が落ちた時に、地元住民の薦めで家畜飼料としてマカが施され、著しい効果があったことが詳細に渡り当時の年代記に記録されています。約200年前の植民地時代の記録によると、この目的のために家畜飼料として約9トンのマカが需要され、それに対する支払が行われた記録が残されています。
ペルーにおけるハーブ医療では、免疫活性、貧血、結核、生理不順、更年期障害、胃がん、不妊症を含む生殖関連の不具合、記憶力強化に用いられているとの報告があります。エナジートニック、生殖能力強化、ホルモンバランス、媚薬、そしてセクシャルパフォーマンスの強化....過去5~6年の間に、米国、欧州、日本におけるマカ販売マーケティングキャンペーンにより、マカの持つ様々な特性にスポットライトが当てられました。ハーブ医療分野では、エネルギー、スタミナ増強、アスリートの持久力強化、メンタリティー強化、男性不能と女性生理不順、慢性疲労等、明確な根拠の有無に関わらず様々な用途で利用されています。

活性成分

乾燥マカの根の栄養価値はとても高く、トウモロコシ、米、小麦と類似しています。大きく見るとその構成は、炭水化物60~75%、プロテイン10~14%、繊維8.5%、脂肪1.2%となり、プロテインは主にポリペプチド(多くのアミノ酸がペプチド化した化合物)とアルギニン、セリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、バリン、フェニールアラニン、チロシン、トレオニンを含むアミノ酸により構成されています。ミネラルは、カルシウム250mg、カリウム2g、鉄分15mg(すべて100g中)が豊富で亜鉛の含有もあり、リノール酸、パルミチン酸、オレイン酸を含む脂肪酸も注目に値する割合で含まれています。また、こうした必須栄養素の良質の供給源であるばかりでなく、ステロール、アルカロイド、タンニン、サポニンの含有も確認されています。1981年に行われた化学分析では、アブラナ科の植物に一般的に見られる成分で木材の防腐剤や殺虫剤として利用される芳香性イソシオシアネート含有が確認されています。また、媚薬成分として知られているP-メソクシベンジルイソシオシアネーテの含有も化学分析で確認されています。少なくとも4種類のアルカロイドが存在すると言われていますが、これについては未確認です。ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー等アブラナ科の多くの植物に見られるグルコシノレートの含有が生マカの根においても確認されています。グルコシノレートとして分類される植物成分には、癌予防特性があるとの報告があります(マカにおける含有は未確認)。

生理作用に関するリサーチ

マカが生殖機能を刺激し、性能力を活性化する作用に関する研究は、1961年に行われたラット実験に遡ります。以来、マカが人の生殖機能に対し与える作用については、主に商品販売を前提としたマーケティングキャンペーンの一環として、様々なリサーチが行われてきました背景があります。そして、その大部分は2つのマカ製品販売企業により行われてきました。これら実験結果を解釈するにあたり、リビドー(性欲)に対し与える作用の測定実験は、仮にそれが客観的手法により行われたとしても主観的になりがちであり、特に商品販売が前提となる実験では、期待する結果が得られるように解釈されがちであることは常に留意する必要があります。
性的(生殖)能力に対しマカが与える作用については、2000年にはじめて公表され、良好な結果が報告されています。これは、生殖能力の欠如したラットを用いた動物実験で、マカ製品販売会社のスポンサーにより行われたものです。翌2001年には、再びラットによる動物実験が行われ、前年の実験結果を裏付ける内容が報告されています。2001年には更に2つの実験が行われ、雄ラットの精子生産に与える作用と、9人の健康な成人男性を対象とし、精子の数と動きをモニターする実験で、それぞれ良好な結果が報告されています。2002年発表の未経験ラットを用いた実験では、性的(生殖)能力に向上が見られたこと、そして健康な男性を対象とした性欲に対する自己認識テストでは、媚薬効果とリビドー(性欲)を強化するとの結果が報告されています。一つ留意すべき点は、これらラットやマウス実験では、体重1kgに対し4gのマカエキスが投与されており、これを人の体重に換算すると、75kgに対し300gとなります。また、これら一連の実験では、マカが及ぼす作用のメカニズムや、観察された作用とマカに含有されている成分とを関連付ける説明はなされていません。
マカが生殖機能に対し及ぼす好作用は、マカに高いレベルで含有されているプロテインや生命活動に必要な栄養素との関連によって説明することができます。乾燥マカの根には約10%のプロテインが含まれており、その大部分はアミノ酸に由来します。プロテインの構成要素であるアミノ酸は、生殖器系を含む体内の細胞を機能させるために必要不可欠な成分で、食生活を通じて体内に摂り込む必要があります。また、アミノ酸はドーパミンやノルアドレナリン等神経伝達物質の生成に必須の物質でもあり、神経組織において信号を伝達する役割を担い、精神的な部分での性的高揚や肉体的な部分でのセックスパフォーマンスに対しても重要な役割を演じています。ドーパミンやノルアドレナリン等神経伝達物質生成において必要欠くべからざるアミノ酸としては主に、『フェニールアラニン』、『チロシン』、『ヒスチジン』が知られており、マカにはこの3種類のアミノ酸が高い割合で含有されています。また、マカに大量に含まれているもう一つのアミノ酸『アルギニン』は、臨床的には証明されていないものの、男性の性不能症に対し拮抗作用すると考えられている一酸化窒素の生産を助長する作用が知られています。今日販売されているリビドー(性欲)やセックスパフォーマンス向上を目的としたサプリメントにアルギニンが配合されているのは、このためです。
『ヒスチジン』の働きは見逃されがちですが、ヒスチジンはオーガズムを感じたりや射精する際に重要な働きをするアミノ酸として知られています。体内でヒスチジンからヒスタミンが生成されます。男性生殖器の海綿体内に存在するヒスタミンが最終的に射精の発生と深く関わっていると考えられています。例えば、早漏の男性は、ヒスタミンの活動が活発化する傾向が見られるので、早漏改善には単純に抗ヒスタミン剤を摂取したり、ヒスチジンからヒスタミンを生成する働きを阻害する働きを持つアミノ酸『メチオニン』を摂取することがしばしば役立ちます。これは抗ヒスタミン剤がもたらす、オーガズムに対する感受性が低下する(感じ難くなる)副作用を説明するメカニズムと同じです。反対に、オーガズムに対する感受性を高めたい場合は、『ヒスチジン』を補うことにより生殖器内のヒスタミンレベルが上がり、射精やオーガズムへの感受性が高まります。『ヒスチジン』には『アルギニン』と同様に、強力な血管拡張作用があるので、生殖器への血流増加を促す効果もあります。これまでに行われたラット等を用いた動物実験では、マカの投与によりラットの交尾回数が増加するとの報告がありますが、これはマカに大量に含有されている『ヒスチジン』により、生殖器内のヒスタミンレベルが上昇し、射精が容易に発生するようになり、結果交尾回数が増えたと考えることができます。
これまでに行われたマカのマーケティングキャンペーンから、マカはホルモンバランス調整、甲状腺機能強化、更に免疫力強化に良好作用を及ぼすことが知られていますが、これらについてもマカに含有されているアミノ酸やその他の重要な栄養素との関連により説明をすることができます。ホルモンは人間の体内で分泌腺により作られる物質で、体内の各機能をコントロールする効果を持っています。そして様々な構造を持っていますが、基本的にアミノ酸とコレステロールにより構成されています。体内のアミノ酸が十分なレベルで保たれていれば、ホルモンは体内で生産され、生体バランスを整えます。アンデスのような厳しい自然環境では、マカはアミノ酸を含む栄養素の供給源として極めて重要な役割を担っています。これまでに行われたマカのマーケティングキャンペーンで、マカはテストステロン又はセックスホルモンを合成を助長すると謳われてきましたが、2003年に発表されたダブルブラインドプラシーボ実験ではこれを否定する結果が得られています。この実験では、マカエキスを1日あたり1.5~3gの割合で摂取した複数の成人男性の生殖器内のテストステロンを含むホルモンレベルの測定を行ったところ、変化が見られなかったと報告しています(若干減少したケースもあります)。

マカ

調製 ドライハーブ、フレッシュハーブ、カプセル
作用 強壮、栄養補給、生殖機能強化、ホルモン機能サポート、疲労回復
適応 アミノ酸、ミネラル、ビタミンの天然供給源として/ホルモン機能サポート/不妊症の解決に(男性、女性)/媚薬効果
科学的手法により検証された適応 媚薬効果、生殖機能強化、精子増量促進
民間伝承的適応 ホルモン機能調整、免疫活性、強壮
注意 大量に摂取するとガスが出やすくなる

アンデスのマカ産地では、1週間に数キロ単位でマカが食される場合もあります。海外では、粉末加工・カプセル詰めされたドライマカが、生殖機能・スタミナ強化といった側面がアピールされ、サプリメントとして販売されています。ホルモンバランス、甲状腺の活性化からダイエットへ、運動能力、セクシャルパフォーマンス等々...マカ秘める様々な効果を十分に堪能するには、数グラムではなく数十グラム単位での摂取が必要となります。今から6年程前、マカが初めてマスメディアに登場した頃、『天然のバイアグラ』という触れ込みで主に男性をターゲットに販売されました。確かにマカには、男性ホルモン『テストステロン』の分泌を促進し、セクシャルパフォーマンスの向上に寄与する側面はありましたが、第一次マカブームが起こった後すぐにセールスは下降しました。それはマスメディアでアピールされた程の効果がなかったからです。数年後、今度は従来型エストロゲン補充療法の副作用に対する関心が高まる中、マカはホルモン補充療法代替手段として、主に女性向けにマーケティングキャンペーンが行われています。確かに、マカは女性ホルモン『エストロゲン』の分泌を促進し、更年期に現れる様々な障害を緩和する側面を持っています。しかしながら、マカは、ビタミン、ミネラル、アミノ酸といった生命活動を維持・調整するにあたり必要不可欠な栄養素の素晴らしい天然の供給源であるということを忘れるわけにはゆきません。マカに含まれる様々なビタミン、ミネラル、アミノ酸は自然な状態で相互に作用し合い、体内への吸収を助け、素晴らしい働きを示します。但し、マカは劇的なスピードで作用したり、『奇跡』を起こすハーブではないことを一方では認識する必要があります。事実、マカの産地であるアンデスの地元料理では米や豆やポテトと同様に主食としてみなされている根菜なのです。天然の『マルチビタミン』サプリメントとの位置づけがもっともふさわしいかと思われます。
現在市場では、標準化されたマカエキスを入手することは可能ですが、これらは企業が求める特定の成分のみを基準に濃縮したものであり、濃縮された成分単体がもたらす生体作用についても更にリサーチする余地が残されている点に十分留意する必要があります。海外におけるマカの需要拡大に伴い、アンデスでのマカ栽培は拡張しています。マカが一時のブームに終わるのではなく、持続的に消費され続けることが現地の人々にとってはとても重要なことなのです。アンデスの厳しい環境に住む人々にとってマカは貴重な現金収入となっています。様々な色をした10種類前後のマカが栽培されていますが、植物化学的には、どれも大差ありません。レピディウム・ペルービアン・チャコン種が主に栽培されています。

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