ヘルゴンサッチャ(JERGON SACHA)
ムルング(MULUNGU)

Family (科名) Fabaceae
Genus(属名)  Erythrina
Spieces(種名) mulungu, cristi-galli


使用部位 

樹皮、根

伝統的利用法

1:4チンキ1回1~2mlを1日1~2回
煎じ茶1/2カップを1日1~2回

禁忌

沢山摂取した場合、眠気を催します。
伝統的にムルングは血圧を低下させる目的で利用されています。動物実験において血圧降下作用があること確認されています。血圧降下の目的で利用する場合或いは低血圧な方がムルングを利用する場合は適宜血圧を注意深くモニターすることが必要です。

薬との相互作用

報告はありません。ムルングはジアゼパム等の抗不安剤や血圧降下剤の効果を強化する可能性があります。

一般名

Mulungu, corticeira, murungu, muchocho, murungo, totocero, flor-de-coral, arvore-de-coral, ceibo, chilichi, chopo, hosoba deiko, pau-imortal, suina-suina, mulungu-coral, capa-homem, amerikadeigo

異名

Erythrina verna, Corallodendron mulungu

ムルングは枝が多く、高さ10~14m程に成長します。
枝の先には赤味がかったオレンジ色の美しい花を沢山つけハチドリが受粉している光景を目にします。花の色が珊瑚の色に似ていることから、『珊瑚の木』と呼ばれることも。黒い莢の中には赤と黒の大きい種が入っていて、先住民の人々によりネックレスなど装飾品の原材料として利用されています。
ムルングはブラジル北部からペルーアマゾンが原産で、ラテンアメリカの熱帯気候地帯の、湿地帯や川べりで典型的に自生しているのを目にします。
Erithrina属100種類以上の潅木や木々により構成されていて、その多くは沢山の棘に覆われており、両半球の熱帯、亜熱帯地域に広く自生しています。
ムルングは1829年に初めて記録され、"Erythrina mulung"や"Erythrina verna"の学名で知られています。
"Erythrina cristal-galli"という学名の近似種がもう一つあり、Erythrina cristal-galliは南米大陸の極南部に自生していて、南米薬用ハーブシステムでは互換的に用いられています。Erythrina cristal-galliの花はアルゼンチンの国花としてみなされています。

ムルングの特性

100種類以上のErythrina属の植物のうちいくつかは、先住民により薬や殺虫剤、魚を捕る為の毒として利用されています(1)。
ブラジルアマゾンの先住民はムルングを自然の鎮静剤として利用しています。興奮気味の神経システムを落ち着かせたり、安眠を促進する目的で利用されています。
南米と北米のハーブ医療においては、気持ちの乱れや神経性の咳を止めたり、不眠症を含むその他の神経系統の不調の治療など優れた鎮静剤として知られています(2)(3)。また、喘息、気管支炎、歯肉炎、肝炎、膵臓や肝臓の炎症、間欠熱、不眠症の治療や肝臓障害を一掃する等の用途でも広く用いられています。(2)(3)。ブラジルやペルーでは癲癇の治療にムルングが用いられています。
米国ではハーブ研究家や自然療法士が、トラウマやショックなどが原因で起こるヒステリーを静めたり、神経系統を安定させる為に用いる軽い催眠性のある鎮静剤、神経伝達システムの過剰活動を静めることによって健全な安眠パターンの定着を推し進めたり、心臓の動悸を調整したり、肝炎や肝臓の失調の治療に用いています(4-7)。
心臓の動悸の調整作用や血圧の低下作用に関してはいくつか研究結果が発表されていて、アマゾン産薬用植物を実際の治療に取り入れているカイロプラクティックの医師であるDr. Donna Schwantkowskiは自身の著書の中で、ヘルニア、胃痛、癲癇、母乳の分泌増加を助ける効能があるとしてムルングの使用を推奨しています(6)。

ムルングの活性成分

ムルングの活性成分については多くの研究がなされ、多くの新種のフラボノイドやトリテルペン、アルカロイドの含有が発見されています。
Erythrina種のアルカロイド成分については過去10年間に多くの研究がなされています(8)。そしてそれらは様々な特性を持ち合わせたとても活発な植物化学成分の一群であることが明らかにされていて、ほとんどすべてのErithrina種の植物に存在しています。これまでに78~107種類に及ぶErythrina属の植物からアルカロイドが発見されていて、ムルングに関しては20種類のイソキノリンアルカロイドが含まれていることが調査されていて、その多くは殺魚、消炎性、心臓作用、鎮静、催眠特性を示すことがわかっていますが(1)(9)(10)、なかでもクリスタミジンアルカロイドは、1995年に発表されたラットを使った動物実験の結果肝臓機能にポジティブに作用することが実証されています。
ムルングの血圧低下作用と心臓調整作用は、 ムルングに含まれているアルカロイドグループに起因していることが判っています(8)。
ムルングやその他のErithrina種に含まれるエリソディンと呼ばれるアルカロイド成分は、先住民が使うクラレ毒矢に特徴的な神経筋伝達阻害作用を持つことが実証されています。また、2つのリポートがエリソディンがアンチニコチン薬として有効である可能性につき指摘していて、強力な拮抗薬として、ニコチンレセプターを阻害する作用が実証されています。

精神安定

不安やストレスに対するムルングの伝統的な利用法については2002年に発表された研究リポートで評価されています。そこでは不安に関連した感情的反応を変化させる作用について示されていて、人間的不安障害とパニック障害に相互関連付けられた動物の実験モデルにムルングエキスを与えると、ムルングエキスがジアゼパム精神安定剤に類似した作用を生み出すと報告されています。
またリポートの中では、エリスリナに含まれるアルカロイドが、ガンマアミノアチル酸に変化を与える可能性が示唆されています。GABA=ガンマアミノアチル酸は、脳内で神経伝達物質として働くアミノ酸様物質で、その機能に異常をきたすと、癲癇、精神的不安定、鬱などの症状を結果的に引き起こすと考えられています。
更に、ムルングの伝統的利用法の一つである喉や泌尿器系の感染症における抗菌剤としての機能についても評価されていて、ブドウ球菌に対する抗バクテリア作用と抗ミコバクテリア作用について2つの研究リポートで報告されています。

【出典】
Schultes, R.E., and Raffauf, 1990. The Healing Forest. Medicinal and Toxic Plants of the Northwest Amazonia, R.F. Dioscorides Press, 1990.
Cruz, G.L. 1995. Dicionario Das Plantas Uteis Do Brasil, 5th ed., Rio de Janeiro, Brazil, Bertrand 1995.
de Almeida, E.R., 1993. Plantas Medicinais Brasileiras, Conhecimentos Populares E Cientificos. Hemus Editora Ltda. Sau Paulo, Brazil.
Dr. Donna Schwontkowski., 1994, 1995. "Herbal Treasures from the Amazon",
A series of three articles published in Healthy & Natural Journal 1994, 1995.
Powerful and Unusual Herbs from the Amazon and China, The World Preservation Society, Inc. 1993, 1995
Schwontkowski, Dr. Donna, 1993. HERBS OF THE AMAZON, Traditional and Common Uses,Science Student BrainTrust Publishing, Utah.
Easterling, J. 1993 Traditional Uses of Rainforest Botanicals
Santos, WO., et al., Pesquisas de Substancias Cadioativas em Plantas Xerofilas Medicinais, IX Simposio de Plantas Medicinais do Brasil, P. 45 Sept. 1-3, 1986, Rio de Janeiro-RL, Brasil.
Pohill, RM., & Raven, PH., 1981. Advances in Legume Systematics, Part 2., Royal Botanic Gardens, Kew, England.
Sanzen T, et.al.,1995., Expression of glycoconjugates during intrahepatic bile duct development in the rat: an immunohistochemical and lectin-histochemical study. Hepatology 1995 Sep;22(3):944-951
Lee RF, et.al., 1972, The metabolism of glyceryl ( 35 S)sulfoquinovoside by the coral tree, Erythrina crista-galli, and alfalfa, Medicago sativa. Biochim Biophys Acta 1972 Jan 28;261(1):35-37
Inamura, H., M. Ho and H. Ohashi, 1981. Gifu Daigaku Nogakubu Kenyu Hokoku, (1981) 77 (C. A. 96:196524y).

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