ムタンバは中型の木で、 高さ20m、幹の直径は30~60cm位に成長します。長方形の葉の長さは6~12cmで、小さく白味がかった薄黄色の花をつけ、かさとげのついた実は食べることができます。 南北アメリカ大陸の熱帯気候地帯に自生していて、勿論アマゾン熱帯雨林でも見ることができます。
中南米におけるムタンバの伝統的利用方法
ムタンバはそれが自生しているほとんどの国のハーブ医療に取り入れられています。特に樹皮と葉の部分の薬効が高く、 また時には新鮮な根が利用されることもあります。
ブラジルでは砕いたムタンバの樹皮を一握り10分ほど3カップの水で煮出し、赤痢や下痢、泌尿器系の疾患、出産を助ける為に子宮を刺激する用途で利用されています。皮膚のあれや感染症、発疹などにはもうすこし強く煮出したお茶が用いられます。また、ムタンバの樹皮から煮出したお茶には発汗作用があると考えられていて、 熱、咳、気管支炎、喘息、肺炎、肝臓障害などに利用されています。
メキシコではムタンバは『ガシマ (Guasima/Guacima)』と呼ばれていて、原住民によるムタンバの利用には長い歴史があります。 メキシコ北西部に住むウアステックマヤ族では新鮮な樹皮を水で煮出して、お産の手助けや胃腸の痛み、下痢、赤痢などに利用されています(1)。ペルーでは乾燥させた葉や樹皮を煎じて、腎臓障害、肝臓障害、 赤痢の治療の時に利用しています。
ペルーアマゾンでは、脱毛症、喘息、気管支炎、 皮膚病、下痢、赤痢、象皮病、熱、肝炎、ハンセン病、マラリア、腎炎、肺炎、梅毒など内服薬として或いは外用薬として広く用いられています。ガテマラでは乾燥させた葉でお茶をたて、熱、腎臓障害、 皮膚障害の薬として飲用したり、傷や皮膚のあれなどには患部に直接つけたりしています(2)(3)。
ムタンバの特性に関する研究
ハーブ医療の歴史においてムタンバの有効性には定評があり、研究対象として注目が集まるようになり、1968年からムタンバの特性や作用に関する実験や研究も本格的に始まり、現在に至る間、数多くの研究がなされて参りました。
初期の動物実験では、水性、アルコール性など様々なムタンバのエッセンスに、若干の心臓病の抑制効果や心臓強壮作用、血圧降下作用、筋肉弛緩作用、子宮刺激作用があることが実証されています(4)。
1987~1993年に発表された5つの研究では、ムタンバの葉や樹皮から抽出した様々なエッセンスが、生条件体外において様々な病原体に対し抗ウィルス、抗菌作用を持つことが明らかにされています(3)(5)-(8)。
また、1995年の研究では生体条件外で淋病に対し有効な特性を持つことが実証されています(9)。また、1974年に公表されたリポートでは、ムタンバの樹皮の持つ軟体動物(ナメクジなど)を駆除する作用について述べられています(10)。
ムタンバの持つ抗癌作用
特に注目すべきは、ムタンバの持つ抗癌作用ですが、1990年の研究では、乾燥させたムタンバの葉から抽出したエッセンスが癌細胞に対し細胞毒性を持つことをブラジルの研究グループが生体条件外にて実証 していて、癌細胞の成長を97.3%抑制する結果が得られています(11)。
近年行われれたいくつかの研究では、ムタンバの樹皮と葉に含有されている抗酸化特性や、プロスタゴランジン(バクテリアや病原体が増殖して行くプロセス)に干渉する能力に注目が集まっています(12)-(14)。
【出典】
Dominguez, X.a., et.al 1985. Screening of Medicinal Plants Used by Huastec Mayans of Northeastern Mexico. J Ethnopharmacol 13 2: 139-156
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Caceres, A, et al. 1987. Screening of Antimicrobial Activity of Plants Popularly Used in Guatemala for the Treatment of Dermatomucosal Diseases. J Ethnopharmacol 20 3: 223-237 (1987)
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Caceres, A. et.al. 1993. Plants Used in Guatemala for the Treatment of Respiratory Diseases. 2: Evaluation of Activity of 16 Plants Against Gram-positive Bacteria J Ethnopharmacol 39 1: 77-82
Caceres, A. et.al. 1993. Plants Used in Guatemala for the Treatment of Gastrointestinal Disorders. 3. Confirmation of Activity Against Enterobacteria of 16 Plants. J Ethnopharmacol 38 1: 31-38
Caceres, A. et.al. 1995. Anti-gonorrhoeal Activity of Plants Used in Guatemala for the Treatment of Sexually Transmitted Diseases. J Ethnopharmacol 48 2: 85-88
Pinheiro De Sousa, M. et.al., 1974. Molluscicidal Activity of Plants from Northeast Brazil Rev Brasil Pesq Med Biol 7 4: 389-394
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Hor, M. et.al., 1995 Inhibition of Intestinal Chloride Secretion by Proanthocyanidins from Guazuma Ulmifolia. Planta Med 61 3: 208-212
Hor, M. et.al., 1996 Proanthocyanidin Polymers with Antisecretory Activity and Proanthocyanidin Oligomers from Guazuma Ulmifolia Bark. Phytochemistry 42 1: 109-119
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