Family (科名) Olacaceae
Genus(属名) Ptychopetalum
Spieces(種名) olacoides
使用部位
樹皮、根、茎
伝統的利用法
ムイラプアマに含まれる多くの有効成分が水溶性でないことから、アルコールチンキとしての利用が最適と考えられます。1回1~3mlを1日2回が摂取量の目安となります。
伝統的には、ティースプーンに1杯程度のムラプアマの樹皮か根の粉末を1カップの水で 沸騰しない程度に弱火でコトコト15分ほど煮詰め、強壮剤として用います。1日1/3~1カップが摂取量の目安となります。
禁忌
報告がありません。
薬との相互作用
報告がありません。
一般名
Muira puama, potency wood, marapuama, marapama, muirat, muiratam, pau-homen, potenzholz
異名
なし
ムイラプアマは、アマゾン熱帯雨林とブラジル北部原産の高さ5m程の低木で、『性機能を増強する木』として知られています。小さな白い花とピリッとしたジャスミンのような香が特徴的です。Ptychopetlum属に分類される植物は7種しかなく、そのうち5種がアフリカ熱帯産で、南米熱帯産は2種類しかありません。"P. olacoides"と"P. uncinatum"で前者はブラジル、フランス領ギニア、ガイアナ、スリナムで見ることができ、後者は主にブラジルにのみ自生しています。南米のハーブ医療では、"P. olacoides"と"P. uncinatum"は互換的に利用されていますが、ルペオール(植物由来の有効成分)が多く含有されているので、一般的に"P. olacoides"の方が好まれているようです。"Liriosma ovata"のことをブラジルではムイラプアマと呼ぶ場合がありますが、これは全く別の種類の植物です。
ムイラプアマには利用できない部位がなく、根から葉の先端まで薬草として利用されていますが、その中でも特に根と樹皮が最も頻繁に用いられます。アマゾンでのムイラプアマ利用の歴史は古く、またその用途は多岐に渡っています。アマゾンの支流リオネグロ川沿いの先住民部族では、ムイラプアマの若木の根と茎を強壮剤として、神経筋肉の不調の治療に用いてます。根の煎じ茶を風呂に入れたり、マッサージに利用し、麻痺や脚気の治療に用いています。また、根と樹皮から作るお茶は経口摂取し、薄弱な性的能力、リューマチ、流感、心臓や胃腸機能衰弱の治療に用いられています。また、ハゲの予防薬としても重宝されています。ブラジル産ハーブの中でもムイラプアマは媚薬として、或は強力な性的興奮剤として高く評価されています。1950年代以来、ムイラプアマはブラジル薬局方に登録されていて、神経筋肉の強壮剤としての応用範囲は広く、消化不良、生理障害、慢性リューマチ(局所的に)、性的インポテンツ、流感、手足の運動失調症、中枢神経障害、無力症、麻痺があります。
今日、ムイラプアマは欧米のハーブ医療でも広く採用されています。かつてヨーロッパの探検家達がムイラプアマの伝統的利用法、特にその媚薬効果としての特質に気付き、祖国へ持ち帰りました。イギリスではいち早くムイラプアマがハーブ医学に取り入れられ、今日でも英国ハーブ薬局方(ブリティッシュハーバルメディスンアソシエーションからの著明なハーブ医学情報源)には、赤痢やインポテンツの治療薬としてムイラプアマが推奨されています(4)(5)。1925年、ムイラ・プアマに関する薬理学研究が発表され、神経システム失調やインポテンツ治療における効能が紹介されました。特に歩行性運動失調症や長時間立ちっぱなしの状態で起きる神経痛、 慢性リューマチや部分的な麻痺に対して永続的な効果があることが示されています(1)。欧州でのムイラプアマの利用法としては、インポテンツ、生殖器不能、神経衰弱、生理障害、赤痢等が挙げられます。ドイツでは中枢神経強壮剤として、十二指腸虫、生理障害、リューマチの治療に採用されています。米国でもムイラプアマの人気は高く、多くのハーブ医療関係者が様々な用途で利用しています。用途としては、インポテンツ、鬱、生理痛、生理前症候群、神経衰弱、中枢神経障害があります。
ムイラプアマの効能のメカニズムに関する研究は1920年代に始まりました。ムイラプアマの効能のメカニズムを解明する為に、ムイラプアマの根と樹皮に含まれる活性成分に関する研究が始められました(6)-(8)。初期の研究においては、ムイラプアマの根と樹皮には、豊富な脂肪酸類、脂肪酸エステル類(主にベヘン酸)、エッセンシャルオイル類(ベータ・カリオフィレンとアルファ・フムレン)、植物ステロール、トリテルペン(ルペオールを含む)、そしてムイラプアマの名前の由来にもなっている『ムイラプアミーナ』と呼ばれる新種のアルカロイドが含まれていることが発見されています(1)。その後ムイラプアマの媚薬効果やインポテンツの治癒における効果が再び注目され、1960年代後半~1980年代後半にかけて、ムイラプアマの活性成分や薬理学的成分に関する研究が再開されました(9)-(15)。これらの研究では、遊離長鎖脂肪酸類、セスキテルペン類、モノテルペン類、アルカロイド類が発見されています。更に、ムイラプアミン(0.05%)、脂肪(0.4%)、アルカロイド(0.5%)、フォルバフェーネ(0.6%)、 アフファレジニック酸(0.6%)、 ベータレジニック酸(0.7%)、ベヘニック酸(0.5%)、 ルペオール、ベータシトステロール、タンニン、揮発性オイル、脂肪酸を含むエステルの含有が確認されています。
メイロ・ペナ著『Notas Sobre Plantas Brasileiras』が1930年に出版され、REBOURGEON博士によりフランスで実施された生理学的・治療学的実験を引用し、 ムイラプアマが胃腸や呼吸器系の衰弱、生殖器官不能症の治療に効果があると述べています(2)。インポテンツの治療におけるムイラプアマを用いるメリットについては、フランスで行われた2つの人体におけるリサーチが知られています。ここでは、ムイラプアマは性的欲求を改善したり、勃起性機能不全の治療に有効であると報告しています。行わ ∑@を持つ62%の被験者がムイラプアマエキスが『ダイナミックな効果をもたらした』と感じ、勃起性機能不全を持つ51%の被験者がムイラプアマが効果的であったと感じたと報告しています(16)(17)。5年発表のWAYNEBERG博士による別の研究では、テストステロン欠乏の結果として生じる性的無力感や疲労等と関連する男性の性的不全に焦点が絞られています。ここでもムイラプアマの投与を受けた被験者から得た試験結果は前途有望なものでした。66%のカップルがムイラプアマを服用した後にセックスの頻度が上がったと答え、70%の男性に性衝動(リビドー)が強化され、55%の男性でセックスの最中勃起の安定性が改善され、66%の男性で肉体的エネルギー・スタミナが増加した一方で全体的に疲労が減少し、睡眠パターンに改善が見られ、起床時の勃起の硬度と頻度が増加したと報告しています。
更に興味深いことに上のリサーチでは、ムイラプアマは最少ない心身相関症状を示したことにおいて最も効果的であったと報告しています。実際に、心身相関関係の要因を取り除いた状態での試験では、驚くべき結果が得られています。性機能不全に悩む100人の男性患者に対し1日1.5グラムのムイラプアマエキスが投与したところ、テスト対象グループ中85%の被験者が性的欲求(リビドー)の増加を感じ、100%の被験者において性交渉の頻度が上がり、90%において勃起を維持する能力に改善が見られたと報告しています。
人体と動物の生体内条件下における疲労回復、抗ストレス、中枢神経へのムイラプアマエキスの持つ作用について報告するリサーチがあります。ある特殊な方法によりムイラプアマ根から抽出したエキスが、『肉体的、精神的疲労を緩和し』、『虚弱体質を改善する』作用に関し特許が取得されています。ブラジルでは、ムイラプアマ樹皮には中枢神経に働きかける一定の作用があることがマウス実験の結果として報告されています。また、ムイラプアマ樹皮には穏やかで、一時的に血圧を下げる作用があるとの報告もあります。ムイラプアマ根はストレスに起因する潰瘍を抑制する作用を、葉は鎮痛作用を持つことが発見されています。また米国では、ムイラプアマの持つ『体脂肪率を下げ、脂肪分の少ない筋肉を増強し、コレステロールを下げる』作用を人体と動物による長期間に渡る使用を通じ確認したことを踏まえ、特許が正式に提出されています(毒性については書き留められていません)。1983年に公表されたマウスを使ったムイラプアマの毒性検査では、エタノール抽出エキス50mg/1kgの投与量において毒性を持たないことが述べられています。
所謂『媚薬』と呼ばれる多くの薬が歴史に登場しそして消えて行くなかで、ムイラプアマはその地位を保ちつづけ、勃起機能と性本能エネルギー強化に対する最も効果的な自然薬による治療アプローチを提供し続けています。勃起機能不全やインポテンツには、自己医療に頼るのではなく、専門家からのアドバイスを求めることが大切です。時に、これらの症状は血管や心臓機能不全の初期症状とも解釈できます。
性本能エネルギーや性的能力向上を求める場合、ムイラプアマを適切な方法で加工することが必要となります。性本能エネルギーや性的能力に関わると考えられているムイラプアマに含まれる有効成分の多くは水溶性でないので、カプセルやタブレットなど形でムイラプアマの根や樹皮の粉末を摂取するのはあまり効果的とは言えません。 揮発性の必須オイル類やテルペン、ゴムやレジンなどムイラプアマの根や樹皮に含まれている活性成分を解放する為には、アルコールの中で20分以上熱することが必要です。
ムイラプアマの引用
Powerful and Unusual Herbs from the Amazon and China, The World Preservation Society, Inc. 1993,1995
ムイラプアマは神経系統の強壮剤としてまた穏やかな疲労回復剤として用いられてきました。胃腸や生殖器の不調にも効果を発揮します。また、リューマチにも作用し、精神的ストレスやトラウマにも用いることができます。神経系統を刺激し、性衝動(リビドー)を高めます。血流を改善し、体を温めます。ある種のハゲの予防にも役立つと考えられています。神経筋肉の不調にも利用できます。
A Pocket Book of Brazilian Herbs, Antonio Bernardes, Editora e Arta Ltda, 1984
ブラジルにおけるムイラプアマの民間伝承的利用:ムイラプアマは媚薬として或は神経系統の強壮剤として利用されてきました。M.PENNA氏は"NOTAS SOBRE PLANTAS BRASILEIRAS"(ARAUJO PENNA & CIA., RIO DE JANEIRO, 1930)の中で、ムイラプアマは神経強壮剤、媚薬、リューマチ薬であり、経験則的に神経系統の不調の治療に推奨されている。REBOURGEON博士によりパリで行われたわれた試験では、薄弱な胃腸機能や循環機能やインポテンスの治療において良好な結果が得られ、ムイラプアマの効能が実証されています。(P258) G.L.CRUZはLIVRO VERDE (607)の中で、神経系の不調やインポテンスに対するムイラプアマの使用を指摘しています。インポテンスや性欲の欠如の治療にブラジル人男性は通常ムイラプアマとカツアバのブレンドティーを使用します。利用法としては:媚薬、男性の性的不全治療、神経衰弱や神経痛等神経系の不調の治療、リュウマチ、胃腸強壮。
Herbal Treasures from the Amazon, By Dr. Donna Schwontkowski. (A series of three articles published in Healthy & Natural Journal 1994, 1995).
運動トレーニング中やトレーニング後の疲労回復促進に、強力な強壮剤として、神経系増強剤として用いるアマゾン産の主要なハーブとして、ムイラプアマとカツアバがあります。ムイラプアマはリューマチ薬としても用いられています。アマゾン産の薬草の中で媚薬として、またインポテンスの治療に伝統的に用いられているハーブが3種類あります。ムイラプアマ、カツアバ、カジュエイロの3種類です。パリにあるセクソロジー協会の研究では、ムイラプアマはヨーヒンベよりも勃起不全に対しより効果的であると実証しています。神経系の強壮剤として伝統的に用いられているアマゾン産の薬用ハーブとしては、カツアバ、レモンバーム、パッションフラワー、ムルング、スターアニス、スマ、キャッツクロー、ムイラプアマがあります。ムイラプアマは神経系に対する良質の強壮剤で、神経痛や精神的な鬱の治療にその用途が求められています。生理中や更年期においてバランス調整を助けるアマゾン産のハーブとしては、アブータ、パッションフラワー、ムイラプアマ、スターアニス、キャッツクローがあります。ブラジルではムイラプアマを生理痛や生理前症候群、冷感症に利用します。神経系の強壮剤ともなり、鬱症状を緩和します。
Discovery Channel Health Article by Chris Kilham
数はそれほど多くありませんが、これらの植物に対する科学的アプローチとしては、複数の学術機関紙や報告会においてその性的強壮剤としての用途をサポートする報告があります。カツアバは、カツアビンA,B,Cと呼ばれる3種類のアルカロイドグループが神経系を刺激し、性機能を強化すると考えられています。ムイラプアマは、ベータシトステロールを含むステロールグループが、有効成分として特定されていて、それらが媚薬効果をもたらすと考えられています。ムイラプアマを使用したある試験では、51%の男性が勃起不全に改善があったと報告し、62%が性衝動(リビドー)の増加を経験しています。
マナウスに滞在した後、ベルニーと私は、イピシュナ族とクリニコル族の先住民と一緒に水上丸太小屋生活をしながら、アマゾン川を下りました。先住民ガイドと共に熱帯雨林に分け入ると、彼は私達にカツアバとムイラプアマの木々が生い茂る場所を複数案内してくれました。カツアバ樹皮の採集現場と地元のバイヤーへ販売されて行く現場に立会いました。そして、多くの先住民がカツアバとムイラプアマの樹皮を束ね室温の水に一晩浸し、翌朝琥珀色になった液体を飲用するのだと学びました。
カツアバとムイラプアマに関し我々が学んだ事とアントニオ・マタスが分け与えてくれた知識を確認するために、ベルニーと私は、アマゾン薬用ハーブに造詣の深い年老いた女性のシャーマンとのインタビューを試みるべく出発しました。それぞれのシャーマンが、ムイラプアマとカツアバには著しい性的元気回復作用があると語って聞かせてくれました。テレセと呼ばれる89歳になる女性シャーマンがアントニオの言葉を伝えてくれました。『カツアバとムイラプアマが一緒になると人々を再び若返らせることができる』と。
【出典】
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