サングレデグラード(Sangre de grado)
サングレデグラード(Sangre de grado)

Family (科名) Euphorbiaceae
Genus(属名)  Croton
Spieces(種名) lechleri, salutaris, planostigma

使用部位 

樹皮、樹液

伝統的利用法

外用の場合、樹液を患部に直接数回塗り込み、自然乾燥させる。赤い樹液が布につくとおちないので、樹液が服につかないよう注意が必要です。
経口摂取する場合は少量の水に10~30滴の樹液を溶かし、1日1~3回摂取する。

禁忌

報告がありません。

薬との相互作用

報告がありません。

一般名

Sangre de grado, sangre de drago, dragon’s blood, drago, sangue de drago, sangue de agua

異名

Croton draco

サングレデグラードはアマゾンの中でも、ペルー、エクアドル、コロンビアの比較的標高の高いアッパーアマゾンに多く自生しています。高さ10~20メートルほどに成長します。背が高い割には幹の直径は成長したとしても30cm程度で、表皮はつるつるした斑点模様の樹皮に覆われています。葉は大きく、ハート型をしていて、長い枝には緑がかった白色の独特の花をつけます。ペルーやエクアドルではサングレデグラード=龍の血と呼ばれています。木の幹が切られたり、傷ついていると、あたかも木が出血しているように、赤黒い樹液が流れ出る様子に由来しています。Croton属には750種類の植物が分類されていて、南半球・北半球の熱帯性気候や亜熱帯性気候に分布しています。Croton属の植物は薬効活性アルカロイドに富み、一部や便通剤や強壮剤として用いられています。
サングレデグラードは樹液と樹皮に薬効があり、南米アマゾン熱帯雨林において伝統的に利用されてきています。サングレデグラードの利用法について残されている最古の記録は1600年代に遡ります。スペイン人の探検家・ナチュラリストベルナルド・コボがサングレデグラード樹液の薬効が、メキシコ、ペルー、エクアドルの先住民の間で広く利用されていることを伝えています(Joyce, Christoper, 1994. Earthly Goods: Medicine-Hunting in the Rainforest. Little, Brown, &Company; New York, NY )。サングレデグラードは、傷口に直接塗り込み、出血を止め、傷の回復を促進し、傷口をシールし、感染から保護する用途で伝統的に利用されてきました。皮膚についた樹液は素早く乾き、第二の皮膚の如くバリアーとしての働きを示します。骨折や痔には外用として用いられ、経口摂取すれば、腸や胃潰の薬となります。他にも伝統的利用法として、腸熱や歯槽膿漏の治療、膣の洗浄、出産後の止血、皮膚病があります。
今日のサングレデグラード樹液や樹皮の用途は、南米先住民伝統を基礎にしています。ペルーにおける現代ハーブ医療では、痔、膣圧水の殺菌、湿疹、切り傷、虫刺されに外用薬として推奨されています。経口摂取では、口内炎、喉の炎症、胃腸潰瘍やウィルスによる上部呼吸器系、胃の感染症では殺菌作用を発揮し、HIV、癌の治療にも用いられています。ブラジルでの伝統利用法としては、外傷、痔、下痢、口内炎、強壮があります。
サングレデグラードの樹液は植物化学成分の宝庫で、プロアンソシアニジン(抗酸化作用)、フェノール類、ジテルペン、フィトステロール、生体活性アルカロイド、リグナン等の含有が報告されています。先住民が親から子、子から孫へと代代伝えてきたサングレデグラードの利用法は科学的手法により裏付けが取られつつあります。サングレデグラード樹液が示す生体活性作用、特に傷口を癒す作用については、科学的或は還元主義的見地から見た場合、その主要作用因として2つの活性成分が挙げられています。『タスピン』と呼ばれる活性アルカロイドと『ジメチルセドルシン』と呼ばれるジハイドロベンゾフランリガンです。
現象を実証するのが科学の役割であると考える植物学者、ハーバリスト、ナチュロパシードクターは、この還元主義的見解に必ずしも同意しないかもしれません。著明な作家でもあり米国農務省経済植物学者を務めた経歴を持つジェームス・デューク博士はこのことに関し以下の通り雄弁に見解を述べています。「サングレデグラードに関するそのコメントについては好意的に受け止めていますが、一つ付け加えるとしたら『ピクノジェル』を含む『プロアンソシアニジン』と『タスピン』の他にもう一つ活性成分があり、それは『ジメチルセトルシン』です。『ジメチルセトルシン』、『ピクノジェル』、『タスピン』、これら活性成分を抽出し、成分単独でラット実験に用いた結果、すべてが傷を癒す作用を持つことが実証されていますが、サングレデグラードの樹液は抽出成分よりも4倍早く傷口を癒す結果を示しています。全体は部分の和よりも勝っています。複雑に構成された成分同士の相互作用こそがハーブの真骨頂であり、種の多様性が熱帯雨林を偉大さの証です。」
サングレデグラードから抽出した『タスピン』アルカロイドが炎症を和らげる作用について1979年に記録されています(Perdue GP, et al. South American plants II: taspine isolation and anti-inflammatory activity. J Pharm Sci, 1979 Jan)。同じく1985年には、炎症を和らげる作用、肉腫に対する作用、ウィルスに対する作用が記録されています。(Vlietinck, A.J. and Dommisse, R.A. eds. 1985. Advances in Medicinal Plant Research. Wiss. Verlag; Stuttgart, Germany )サングレデグラードの傷口を癒す作用、止血作用については1989年に初めて『タスピン』アルカロイドと関連付けられました(Vaisberg AJ, et al. Taspine is the cicatrizant principle in Sangre de Grado extracted from Croton lechleri. Planta Med, 1989 Apr) その後、タスピンが示す傷口癒し作用と抗腫瘍作用に対し多くの研究が集中的に行われました(Porras-Reyes BH, et al. 1993 Enhancement of wound healing by the alkaloid taspine defining mechanism of action. Proc Soc Exp Biol Med 203(1), 18-25 )(Itokawa H, et al. 1991. A cytotoxic substance from Sangre de Grado. Chem Pharm Bull (Tokyo) 39(4), 1041-1042)。 1993年にリグナン・ジメチルセロルシンがサングレデグラードから抽出され、これが傷口癒し作用の中心的作用因の一つであることが実証されました。ベルギーにおける研究では、サングレデグラード樹液がはリグナン・ジメチルセロルシン単体よりも強力に口の縮を作用を激し、かさぶた形成を促進し、皮膚の再生し、新しいコラーゲンの形成をサポートすることを実証しています(Pieters L, et al. Isolation of a dihydrobenzofuran lignan from South American dragon's blood (Croton spp.) as an inhibitor of cell proliferation. J Nat Prod, 1993 Jun )。これがデューク博士がサングレデグラード樹液はその抽出成分よりも4倍早く作用すると述べるにあたり言及した研究です。また、この研究では『タスピン』はヘルペスウィルスに対抗する活性成分であると断定しています。また、1994年にはフェノール複合体、プロアンソシアニジン、ジテルペン等の活性成分が発見され、これらが大腸菌や枯草菌に対する強力な抗菌作用を示すことが記録されています(Chen ZP, et al. Studies on the anti-tumour, anti-bacterial, and wound-healing properties of dragon's blood. Planta Med, 1994 Dec )。サングレデグラードが伝統的に用いられてきたもう一つの重要な働きである、胃腸内での活性作用については、2000年の実験で実証されています。「サングレデグラードは胃腸潰瘍に対する強力で安価な治療法です。」2002年には同じ研究グループが生体外実験により、サングレデグラードが胃がんと大腸がん細胞に対し細胞毒性を示すことを実証しています。
サングレデグラードエキスが持つ抗ウィルス作用については、インフルエンザウィルス、パラインフルエンザウィルス、単純疱疹(ヘルペスシンプレックス)I,II,III型ウィルス、A,B型肝炎ウィルスに対し生体内環境において抗ウィルス作用を及ぼすことが動物実験で実証されています。過去10年間で、サングレデグラードの持つウィルスや下痢に対する作用は製薬産業が注目するところとなりました。米国の製薬会社がサングレデグラードのウィルスに対抗する3種類の特許が正式に提出されていて、サングレデグラードの樹皮や樹液から抽出できる抗ウィルス特性を示す構成要素、プロアンソシアニジン(フラボノイドグループでSP-303と命名)が含まれています。この特許製剤には、呼吸器系の感染症治療のための経口用薬、ヘルペス治療のための局所用抗ウィルス薬、下痢の治療に用いる経口用薬があります。これらの製品は多くの臨床データの結果生まれたものです。サングレデグラードが示す免疫調整作用をターゲットとしたリサーチの数はそれほど多くありませんが、サングレデグラードが示す炎症を抑える作用、抗菌作用、抗酸化作用が免疫機能の活性化につながると指摘する研究もあります。
サングレデグラードを用いた皮膚香膏(伝統的利用法に根ざした)の特許製品があり、この作用に関し科学的アプローチにより多くの実証実験が行われています。病害虫駆除に携わる人たちを対象としたテストでは、かゆみ緩和、浮腫、ススメバチ、アリ、蚊、切り傷、擦り傷による炎症、植物が原因のかぶれにおいて、サングレデグラード香膏がプラシーボを上まわる良好な結果を出しています。被験者によると、効果は数分のうちに現われるとリポートしています。これら人間や動物による生体内実験や生体外実験から、「サングレデグラードは求心性知覚神経メカニズムの強力な抑制因子となり、神経性炎症として性格付けられる数々の肉体的不調に対しサングレデグラードが用いられてきた伝統的利用法をサポートしている」と結んでいます。
サングレデグラードの先住民による伝統的利用法やサングレデグラードが人体に及ぼす作用の多くは科学的アプローチにより裏付けられています。サングレデグラードの樹液は有益且つサスティナブルに利用可能な熱帯雨林植物資源の一つです。切り傷、引っかき傷等外傷、虫刺され、発疹、感染症には患部に直接つけることにより作用します。ジェームス・ウィリアム博士はサングレデグラードについて次のように述べています。「サングレデグラードには幅広い潜在的用途があります。これには薬剤や化学療法や放射線治療が引き起こす副作用、大腸小腸の細菌感染性下痢、食中毒による下痢、AIDSでみられるようにウィルスが引き起こす下痢が含まれます。過敏性腸症候群や潰瘍等胃腸の不調にも利用可能です。サングレデグラードの持つ細胞毒性は抗腫瘍因子としての働きの可能性を示しています。また、止血作用は外傷治癒での潜在的応用が、細菌に対抗する特性や炎症を抑える特性からは、慢性ウィルス疾患治療への応用やバクテリアに対抗する自然薬としての利用が可能となります。」米国では、サングレデグラード樹液の経口摂取を糖尿病神経障害に、また糖尿病が原因で発生する皮膚のただれや潰瘍には樹液を患部に直接つけることが有効に作用することが多くのヘルスプラクティショナーにより指摘されています。

【出典】
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