サングレデグラード(Sangre de grado)
サルサパリジャ(Sarsaparilla)

サルサパリージャは木本の大きな蔓植物で、長さ50m位に成長します。薬用として利用される長くて塊茎の根が、巻きひげ状に対になりながら地を這う蔓を支えています。 根の香は芳しく、甘辛い風味があります。南米、ジャマイカ、カリブ諸島、メキシコ、ホンジュラス、西インド諸島に自生しています。サルサパリージャはシオデ属の一種ですが、シオデ属は世界中に沢山の種類があり、それぞれ外観、 用途、化学構造がとても似通っています。かつてルートビールに風味を与える為に使われていたサスパリージャという植物がありますが、これは名前は似ていますが、ここで取り上げるサルサパリージャとは関係ありません。

中南米におけるサルサパリージャの伝統的利用方法

サルサパリージャは中南米の先住民により、性不能症、 リューマチ、皮膚病、肉体疲労時の強壮剤として何世紀にも渡り利用されてきた歴史を持っています。元来中南米の先住民の間で強壮剤 として使われていたサルサパリージャの根が、1400年代の大航海時代に商人達により発見され、ヨーロッパの医療へと紹介されました。
ヨーロッパでは、サルサパリージャには変質療法での強壮、浄血、利尿、発汗等の効能があると考えられていました(1)。
1536年にメキシコ産のシオデ属植物の一種の根がヨーロッパの医療に紹介され、梅毒やリューマチの治療薬として熱心な信奉者を作り上げ、以来シオデ属には世界中で梅毒やその他の感染性性病向けに利用されるようになりました。
浄血剤としての評価に関しては、1820年~1910年にかけて梅毒の治療薬 として米国でオフィシャルハーブとして登録されていたことからも明らかです。
1500年代から現代に至るまで、サルサパリージャは浄血剤や強壮剤として利用され、また世界中で同じ条件で、つまりは痛風、梅毒、淋病、外傷、神経痛、熱、咳、腺病、高血圧、消化不要、疥癬、皮膚病、癌などに用いられてきています。治療学的には1日1~3gの服用が良いと報告されています。

サルサパリージャの浄血作用

サルサパリージャの薬効に関する臨床研究は長年に渡り実施されてきました。
中国ではサルサパリージャは梅毒の治療に用いられています。中国における臨床観察によると、 急性症例の場合で90%、慢性の場合でも50%の確率で有効であることが血液検査により確認されています(2)。
1942年には乾癬が劇的に改善したという臨床例が報告されていて、その後サルサパリージャの浄血作用に関し評価や使用が続いています(3)。 1950年代にはサルサパリージャの抗生特性に関する報告が発表されています(4)(5)。1959年のハンセン病治療の補助的手段として有効であることが実際の治療により認められた症例が報告されています(6)。
サルサパリージャの抗炎症(7)や肝臓保護作用(8)については、ネズミを使った動物実験で、食欲増進効果、消化促進作用、利尿作用については実際に人体に対し投与したケースでその有効性が報告されています(9)。
サルサパリージャの浄血作用は、それが血流中の細菌物質を攻撃したり、中和する能力を示すことにより実証されています(10)。

サルサパリージャの植物化学的特性

サルサパリージャの持つ薬効特性の大部分は、ステロイド やサポニンと呼ばれている植物化学成分の薬理学上有効な成分グループにあるとされています。サポニンは、他の薬や植物化学成分の人体への吸収を助け、それ故に様々なハーブフォーミュラにおいて生物学的シナジー効果が得られる、或いは効果増強の作用因として長く使用されてきている歴史があります(2)(11)。
サルサパリージャに含まれているステロイドには、サルササポゲニン、スミラゲニンシトステロール、スティグマステロール、ポリナステロールがあり、サルサポニン、スミラサポニン、サルサパリロシド、シトステロールグルコシドと言ったサポニンが含まれています(2)。
サポニンや植物性ステロイドは、サルサパリージャを含めた多くの植物に含まれていますが、それらはエストロゲン、テストステロンと言ったヒューマンステロイドと化学的に合成されることが可能です。この化学合成は未だ人体レベルで確認された例は発表されていませんが、実験室レベルにおけるレポートは既に公になっています。植物性ステロイドと人体におけるその作用には大きな関心が寄せられていますが、具体的な研究成果はほとんど発表されておりません。
サルサパリージャにはテストステロンやアネクボリックステロイドが含有されているかのように、宣伝や売り込みがなされていますが、これは誤りです。確かにサルサパリージャはステロイドやサポニンの宝庫ではありますが、テストステロンなどがサルサパリージャやその他の植物に発見されたという報告は、これまでのところありません(2)(12)。
サルサパリージャに関し悪性の副作用や毒性は一切報告されていませんが、サポニンを大量に摂取すると胃腸痛を発生させる場合があるので注意が必要です(12)(13)。

【出典】
Hobbs, Christopher, 1988. "Sarsaparilla, A Literature Review," HerbalGram No. 17. Lucas, Richard, 1991. Miracle Medicine Herbs.
Lung, Albert and Steven Foster, 1996. Encyclopedia of Common Natural Ingredients, John Wiley & Sons, Inc., New York.
Thurman, F.M. "The treatment of psoriasis with sarsaparilla compound." New England Journal of Medicine, 337, 128-133, 1942
D'Amico, M.L. "Ricerche sulla presenza di sostanze ad azione antibiotica nelle piante superiori." Fitoterapia, 21(1), 77-79, 1950
Fitzpatrick, F.K., "Plant substances active against mycobacterium tuberculosis/" Antibiotics and Chemotherapy, 4(5), 528-536, 1954
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Ageel, AM, et.al., 1989. "Experimental studies on antirheumatic crude drugs used in Saudi traditional medicine", Drugs Exp Clin Res, 15: 369-72.
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Newal, Carol., Anderson, Linda, Phillipson, J. David., 1996. Herbal Medicine A Guide for Health-care Professionals The Pharmaceutical Press, Cambridge, London
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