シジューム(Sidium)
シジューム(Sidium)

Family (科名) Myrtaceae
Genus(属名)  Psidium
Spieces(種名) guajava


使用部位 

葉、実、樹皮

伝統的利用法

グアバ(シジューム)の果実や果実から作るジュースは美味しく、栄養豊富。薬効的には子供の下痢の治療に効果的に利用されています。葉は煎じてお茶にするのが一般的で、1回1カップを1日1~3回程度摂取するのが量的目安とされています。

禁忌

グアバ(シジューム)は心臓抑制作用を持つとの報告があります。心臓病薬の服用をしている場合は併用にあたり注意が必要です。
グアバの果実には血糖レベルを下げる効果があるとの報告があります。低血糖症の方は摂取にあたり注意が必要です。

薬との相互作用

報告例はありませんが、シジュームの長期にわたる慢性的摂取は心臓病薬と相互作用する可能性が考えられます。

異名

Guava, goiaba, guayaba, djamboe, djambu, goavier, gouyave, goyave, goyavier, perala, bayawas, dipajaya jambu, petokal, tokal, guave, guavenbaum, guayave, banjiro, goiabeiro, guayabo, guyaba, goeajaaba, guave, goejaba, kuawa, abas, jambu batu, bayabas, pichi, posh, enandi

グアバ(シジューム)は、スペイン語圏ではグアヤバ、ブラジルではゴイヤバと呼ばれています。熱帯地方の一般家庭の庭先で普通に見ることのできる薬用(食用)の低木です。グアバ(シジューム)の葉は木陰を作り、果実は生のまま食用としたり、ジュース、アイス、缶詰等に加工されています。アマゾン熱帯雨林では時に豊かに茂った枝にテニスボール大の果実をつけ、20メートル以上にも成長する天然のグアバ(シジューム)を見ることができます。一方、栽培種を平均すると、高さは10メートル程度、果実はレモン程度の大きさに成長します。外観的には、薄く、スムースな手触りで銅色をした樹皮がところどころはげ落ち、緑白色の下地が見えているのが特徴です。熱帯地方では、グアバ(シジューム)の果実は広く栽培され、多くの人にその豊かな栄養と実りを提供しています。グアバは優れた適応性があり、痩せた土壌にも容易に適応し、更に早く実を付けるので、天然種のみならず、栽培目的での改良種も多く、その結果、熱帯雨林気候から亜熱帯気候、地中海気候まで世界の幅広い地域に自生、または栽培されています。果実は沢山の種を含み、種から4年以内に果実を実らせる程度に成長します。アマゾン熱帯雨林では、鳥や猿もグアバの実が好んで食するので、糞に紛れ込んだ種が熱帯雨林中にグアバの群生林を作っています。
ペルーでは数千年前からグアバが栽培されていた可能性が指摘されています。ペルーの考古学発掘サイトでは、豆、豆さや、トウモロコシ等栽培植物と一緒にグアバ(シジューム)の種が保存されているところが発見されています。
先住民たちは、グアバ(シジューム)の実は甘みのあるご馳走として、葉や樹皮は薬用として利用してきた長い歴史を持っています。アマゾンのティクナ族はグアバ(シジューム)の葉や樹皮を煮出し、下痢の治療に用いています。樹皮や葉の温浸出茶や煮出し茶は、下痢や赤痢の治療薬以外にも、喉の痛み、吐き気、胃痛、眩暈、生理不順の用途で多くのアマゾン先住民族により利用されています。グアバ(シジューム)の柔らかい葉はガムとして利用され、口臭予防や止血、また飲酒前に噛むと二日酔い予防に効くと言われています。葉の煎じ茶はうがい薬として、口の中にできた傷の治療に利用されています。また出血時の子宮内洗浄や出産後膣壁調整にも利用されています。樹皮や葉の煎じ茶又は花の温浸出茶は外用薬として、外傷や潰瘍に用いられています。すり潰した花が、結膜炎や目の傷の治療に目薬として利用されることもあります。
数世紀前、アマゾンを訪れグアバ(シジューム)の果実を食した冒険家や商人や宣教師達は、アフリカやアジアや環太平洋の熱帯気候地帯へとグアバ(シジューム)を持ち出し、その結果現在では、グアバ(シジューム)が世界中の熱帯地方で栽培されるようになっています。グアバ(シジューム)は新鮮なフルーツのまま又はジュース、ゼリー、ペースト等に加工され商業利用されています。オランダ薬局方にはグアバ(シジューム)の葉が下痢止め薬として記載され、中南米、西・中央アフリカ、東南アジアの国々では下痢の治療に用いられています。ペルーでは現在でも、下痢、胃腸炎、腸内寄生虫、胃痛、吐き気、咳、膣からの出血、生理痛、生理時の多出血、浮腫にシュジューム(グアバ)が用いられています。ブラジルではグアバ(シュジューム)は収斂剤や利尿剤として見なされ、ペルーと同じ用途で用いられています。グアバ(シジューム)の煎じ茶はうがい薬として、喉の痛み、喉頭炎、口の腫れに用いられ、外用薬として、皮膚潰瘍、膣過敏、出血に用いられています。
グアバ(シジューム)は、タンニン、フェノール類、トリテルペン(ポリテルペンの一つ)、フラボノイド、精油、サポニン類(植物から得られる配糖体で石鹸のように泡立つ)、カロチノイド(動植物の赤黄色素)、レクチン(血液型判定用の凝集素の作用を示す)、ビタミン類、食物繊維、脂肪酸を豊富に含んでいます。特に、グアバ(シジューム)の果実にはビタミンCの含有が豊富に含まれ、100g中80mg以上の含有率を誇り、ビタミンAも同様に豊富に含まれています。グアバ(シジューム)の果実はペクチン(食物繊維)の供給源で、葉にはフラボノイド、特にケルセチン(黄色染料)が多く含まれています。グアバ(シジューム)にまつわる治療効果の多くはこれらフラボノイドに関連しています。フラボノイドには抗菌作用があることが実証されています。ケルセチンは、グアバ(シジューム)の下痢止め作用の要因であると考えられていて、腸内の平滑筋をリラックスさせ、腸の萎縮を防ぎます。更に、グアバ(シジューム)の葉に含まれるフラボノイド類やトリテルペン類には痙攣止めの薬効を示します。葉に含まれるポリフェノール類が含まれているので、抗酸化(老化防止)としても作用します。
グアバ(シジューム)の民間伝承的利用法を基本に、グアバ(シジューム)エキスの効能に対し科学的アプローチがとられています。下痢止めや胃腸炎等消化器官系の不調に関するグアバ(シジューム)の民間伝承的利用は、多くの臨床データにより裏づけが取られています。グアバ(シジューム)の葉より、含有有効成分であるケルセチンを標準化した植物薬が、急性下痢の治療用に開発されています。この薬を使った臨床実験では、成人の下痢に効果があることがわかっています。グアバ(シジューム)の葉抽出エキスと果実ジュースが小児の下痢に臨床的に研究されています。62人の幼児を対象としたロータウィルス腸炎治療の臨床データによると、グアバ(シジューム)を処方した患者のうち、87.1%が3日で回復し、対象グループよりも早く下痢が回復しています。
グアバ(シジューム)にはその下痢止め効果に貢献する多く特質があり、抗菌、抗アメーバ、痙攣を抑える著しい作用が報告されています。また、腸内の平滑筋を鎮静し、下痢の原因となるケミカルプロセスを阻害し、腸内の水分吸収を促進する作用についても実証されています。グアバ(シジューム)の葉からアルコール抽出したエキスにはモルヒネ(アヘンの主成分)様の作用があり、急性下痢の発症時に腸内で発生する化学物質発生を阻害する作用があるとの報告もあります。このモルヒネ様の作用は、ケラチンと関連していると考えられています。更に、グアバ(シジューム)に含まれるレクチンは大腸菌(一般的な下痢の発生要因)を拘束し、大腸菌が腸の壁に付着するのを防ぎ、感染を阻止し、結果下痢止めとなることが示されています。
下痢、赤痢、胃腸炎に対するグアバ(シジューム)の有効性はグアバが持つ抗菌作用に関連していると考えられます。グアバ(シジューム)の樹皮と葉から抽出したエキスには多くのバクテリアに対する毒性を持つことが、生体外実験によって実証されています。ブドウ球菌、シゲラ菌、サルモネラ菌、バチルス菌、大腸菌、クロストリジウム属、プソイドモナス属といった下痢の発生要因となる一般的に知られているバクテリアに対しグアバ(シジューム)は著しい抗菌作用を示します。真菌、カンジダ菌、アメーバ、マラリアに対しても毒性を持つことが実証されています。
2003年の研究では、ブラジルの研究者がモルモットを使いグアバ(シジューム)の葉から抽出したエキスには心臓血管系に対し多くの作用があり、不整脈の治療に役立つ可能性について報告しています。これよりも以前の研究では、グアバ(シジューム)の葉には抗酸化(老化防止)作用があって、その為心臓や心臓を保護する特性に対し有効であり、更に心筋機能を改善することに対し有益であることを指摘しています。2つの無作為に選んだ人がグアバ(シジューム)ジュースを12週間摂取(1日平均摂取量は450~900g)した結果として、平均8ポイント血圧降下、トータルコレステロールレベルの9%減少、トリグリセリド=中性脂肪(グリセリンと3つの水産基すべてに酸基が結合してエステルになったもの)の8%減少、HDLコレステロールの8%増加を報告しています。この結果は、グアバ(シジューム)に多く含まれるカリウムや溶性の繊維質によるものと考えられます。グアバ(シジューム)の葉から抽出したエキスを使った別の動物実験では、グアバ(シジューム)が持つ、鎮痛、鎮静、中枢神経抑制作用や咳を鎮める効果の証拠となっています。グアバの果実や果実ジュースを摂取した健康か或は糖尿病の動物や人間の血糖レベルが正常に近づくことが、実験結果として公表されています。これらの研究報告は、グアバ(シジューム)の民間伝承的利用法の多くが正しいことを裏付ける結果となっています。
グアバ(シジューム)は長年にわたり利用され、その薬効の多くは科学的な実証の過程にあります。下痢に関しては大人子供を問わず安全な自然薬です。熱帯地方でのハーブ医療基準では、2歳以下の幼児の下痢には1日あたり1カップのグアバ(シジューム)の果実ジュースを、大人や成長した子供の場合、葉の煎じ茶を1回1カップを1日1~2回が目安となります。ラットやマウスや人体による毒性試験では、グアバ(シジューム)の実と葉両方とも安全であり、副作用がないと報告されています。

栽培されている主な種類は下記の通り。

  • Kishuarani (果肉は白色)
  • Sarhuinto (果肉はピンク色)
  • Supreme
  • Redland
  • Blanca de Majes
  • RedxSuprmexRuby
  • Patricia
  • Verde-sahuinto
  • Carhuas-sahuinto
  • Yurac-sahuinto



ペルーでは品種改良種は殆ど見られず、大部分は上記太字の2種類でいずれも野生種。

主な栄養成分(果肉100gあたり)


水分

88 g

カロリー

58 Cal.

蛋白質

1.5 g

炭水化物

9.6 g

脂質

0.2 g

カルシウム

49 mg

リン

26 mg

鉄分

1.3 mg

ビタミンA

208 mg

ビタミンC

600 mg


(出典:Cultivo de Fritales Nativos Amazonicos by Tratado de Cooperacion Amazonica)

【出典】
Conde Garcia, E. A., et al. “Inotropic effects of extracts of Psidium guajava L. (guava) leaves on the guinea pig atrium.” Braz. J. of Med. & Biol. Res. 2003; 36: 661-668.
Suntornsuk, L., et al. “Quantitation of vitamin C content in herbal juice using direct titration.” J. Pharm. Biomed. Anal. 2002; 28(5): 849-55.
Beckstrom-Sternberg, S. M., et al. “The phytochemical database.” (ACEDB version 4.3-Data version July 1994.) National Germplasm Resources Laboratory (NGRL), Agricultural Research Service (ARS), U.S. Department of Agriculture.
Jimenez-Escrig, A., et al. “Guava fruit (Psidium guajava L.) as a new source of antioxidant dietary fiber.” J. Agric. Food Chem. 2001; 49(11): 5489-93.
Smith, Nigel J. H., et al. Tropical Forests and their Crops. London: Cornell University Press. 1992.
Arima, H., et al. “Isolation of antimicrobial compounds from guava (Psidium guajava L.) and their structural elucidation.” Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002; 66(8): 1727-30.
Morales, M. A., et al. “Calcium-antagonist effect of quercetin and its relation with the spasmolytic properties of Psidium guajava L.” Arch. Med. Res. 1994; 25(1): 17-21.
Lozoya, X., et al. “Quercetin glycosides in Psidium guajava L. leaves and determination of a spasmolytic principle.” Arch. Med. Res. 1994; 25(1): 11-5.
Begum, S., et al. “Triterpenoids from the leaves of Psidium guajava.” Phytochemistry 2002; 61(4): 399-403.
Lozoya, X., et al. “Intestinal anti-spasmodic effect of a phytodrug of Psidium guajava folia in the treatment of acute diarrheic disease.” J. Ethnopharmacol. 2002; 83(1-2): 19-24.
Wei, L., et al. “Clinical study on treatment of infantile rotaviral enteritis with Psidium guajava L.” Zhongguo Zhong Xi Yi Jie He Za Zhi 2000; 20(12): 893-5.
Tona, L., et al. “Biological screening of traditional preparations from some medicinal plants used as antidiarrhoeal in Kinshasa, Congo.” Phytomedicine 1999; 6(1): 59-66.
Lozoya, X., et al. “Model of intraluminal perfusion of the guinea pig ileum in vitro in the study of the antidiarrheal properties of the guava (Psidium guajava).” Arch. Invest. Med. (Mex). 1990; 21(2): 155-62.
Almeida, C. E., et al. “Analysis of antidiarrhoeic effect of plants used in popular medicine.” Rev. Saude Publica. 1995; 29(6): 428-33.
Lin, J., et al. “Anti-diarrhoeal evaluation of some medicinal plants used by Zulu traditional healers.” J. Ethnopharmacol. 2002; 79(1): 53-6.
Lutterodt, G. D. “Inhibition of Microlax-induced experimental diarrhea with narcotic-like extracts of Psidium guajava leaf in rats.” J. Ethnopharmacol. 1992; 37(2): 151-7.
Lutterodt, G. D. “Inhibition of gastrointestinal release of acetylcholine by quercetin as a possible mode of action of Psidium guajava leaf extracts in the treatment of acute diarrhoeal disease.” J. Ethnopharmcol. 1989; 25(3): 235-47.
Coutino-Rodriguez, R., et al, “Lectins in fruits having gastrointestinal activity: their participation in the hemagglutinating property of Escherichia coli O157:H7.” Arch. Med. Res. 2001; 32(4): 251-7.
Abdelrahim, S. I., et al. “Antimicrobial activity of Psidium guajava L.” Fitoterapia 2002; 73(7-8): 713-5.
Holetz, F. B., et al. “Screening of some plants used in the Brazilian folk medicine for the treatment of infectious diseases.” Mem. Inst. Oswaldo Cruz 2002; 97(7): 1027-31.
Caceres, A., et al. “Plants used in Guatemala for the treatment of gastrointestinal disorders. 1. Screening of 84 plants against enterobacteria.” J. Ethnopharmacol. 1990; 30(1): 55-73.
Garcia, S., et al, “Inhibition of growth, enterotoxin production, and spore formation of Clostridium perfringens by extracts of medicinal plants.” J. Food Prot. 2002; 65(10): 1667-9.
Tona, L., et al. “Antiamoebic and spasmolytic activities of extracts from some antidiarrhoeal traditional preparations used in Kinshasa, Congo.” Phytomedicine 2000; 7(1): 31-8.
Tona, L., et al. “Antiamoebic and phytochemical screening of some Congolese medicinal plants.” J. Ethnopharmacol. 1998; 61(1): 57-65.
Nundkumar, N., et al. “Studies on the antiplasmodial properties of some South African medicinal plants used as antimalarial remedies in Zulu folk medicine.” Methods Find Exp. Clin. Pharmacol. 2002; 24(7): 397-401.
Yamashiro, S., et al. “Cardioprotective effects of extracts from Psidium guajava L. and Limonium wrigth II, Okinawan medicinal plants, against ischemia-reperfusion injury in perfused rat hearts.” Pharmacology 2003; 67(3): 128-35.
Singh, R. B., et al. “Can guava fruit intake decrease blood pressure and blood lipids?” J. Hum Hypertens. 1993; 7(1): 33-8.
Singh, R. B., et al. “Effects of guava intake on serum total and high-density lipoprotein cholesterol levels and on systemic blood pressure.” Am. J. Cardiol. 1992; 70(15): 1287-91.
Shaheen, H. M., et al. “Effect of Psidium guajava leaves on some aspects of the central nervous system in mice.” Phytother. Res. 2000; 14(2): 107-11.
Lutterodt, G. D., et al. “Effects on mice locomotor activity of a narcotic-like principle from Psidium guajava leaves.” J. Ethnopharmacol. 1988; 24(2-3): 219-31.
Jaiarj, P., et al. “Anticough and antimicrobial activities of Psidium guajava Linn. leaf extract.” J. Ethnopharmacol. 1999; 67(2): 203-12.
Cheng, J. T., et al. “Hypoglycemic effect of guava juice in mice and human subjects.” Am. J. Clin. Med. 1983; 11(1-4): 74-6.
Roman-Ramos, R., et al. "Anti-hyperglycemic effect of some edible plants." J. Ethnopharmacol. 1995.

注 : 当ウェブサイトに含まれている情報は、啓発的或いは教育的なところを目的として紹介しているものであり、病状の診断、療法の処方、病気の治療など適切な医療行為の代替としての使用を意図するものではありません。